他所の妻1-22／何故私？

「絶対よ。１０日以内」
「私、出来るかなー？」
考えと裏腹な言葉が出てしまう
「何言っているよ、お姉さん」
「そうよね、さっきまたしようって言ったのよね」
「一度してしまうともうダメ。この快感は亭主では得られないものよ」

確かに優子の言う通りで、遣っている事は一緒なのに、感じ方が全く違う
夫に悪いと思う程、深く感じてしまうのだ
京介さんとがそうだ
あれは今までで、一番大きく深いエクスタシーだった
否定したくても出来ないひかる
会う回数がここの所、月に２・３回に減ってはいても、一年も続いていた
だから、欲求不満と言う訳ではない


１０日も待つ必要は無かった
３日目の木曜お昼にその電話が鳴った
小さな液晶に「木村英治」と映っている
ひかるはボタンがすぐに押せなかった
何秒か迷ったが、押してしまう
「はい？」
「塩谷さんですか？」
「えぇ、そうです」
「木村です・・・今日これから会って頂けませんか？」
「・・・・・優子、いえ中川さんにはもう連絡を？」
「いいえ、貴女だけでは駄目でしょうか？」


次の言葉が出なかった
木村は私と二人で会いたいと言っている
優子の方が体はいいしまた若い
それなのに、何故私？
頭の中でグルグルと考えが回る
へー、私の方がいいんだ、優子よりいいんだ
信じられなかった
男は１０人が１０人、優子を選ぶと思えた

「今日は予定が有るのです」
「・・・・・やはり駄目ですね」
その悲嘆した声、いいえ彼の悲しそうな顔が浮かんで来る
「明日の午後は空いています」
「えっ!!・・・何時に何処へお迎えに伺えば宜しいですか？」
木村は一気に早口になる
「そちらでお決め下さい」
時間と場所、それに車の車種と色を伝える木村の声が、嬉しそうに聞える


ひかるは迷った
優子に伝えようか、それとも黙っていようか？
いいえ、言わないと・・・後にする？それとも前？
すぐに結論が出て、もうボタンを押していた
「これから行っていい？」
「いいわよ、バイトも無くて暇してるから」