甘いヤツ-3／何よ、このおっさん

売ったじゃない、このおっさん
それもあんなに高いワンピース
何で？どうして？


「私どもで何度かお買い上げでしたか？何分ここは今日が初めてですので」
「いいえ、何回か覗いた事は有りましたけれど」
「今まで気に入った物が無かったでしょうか？」
「このブランドは良く知らないし、こうして薦めて頂か無かったので」
「強引でしたか？」
「いえ、とんでもない。　強引だなんて」
「良かった。　私はかなり押してしまいますから」
「また来て頂けますね？」
「はい・・・・・しょっ・・・来ます」
「有り難うございます」


大きな紙のバックを手に持つと、入り口までお送りする
近い内のご来店を、そして有り難うございますと言いながらバックを渡し、深ぶかとお礼をして送り出す

消費税を入れて２６万円ちょっと
いい客になってくれる、必ず
一週間以内にまた来る、必ず



朝の９時前に来て京介が先ずした事は、商品を全て頭に叩き込むことだった
３０分でどこに何が掛かっているか、置いてあるかを覚えた
何百も有る訳ではない
京介にとっては大した数ではなかった


入り口を入ってセンターの奥がレジの置いてあるカウンター
後ろの壁には天井までの棚で、その左にハンガーが並ぶ
その前には大きな楕円形のグレーのテーブルと椅子が４脚
表側に観葉植物の鉢が３つ

右に二つの三面が鏡になっている試着室で、これはかなり大きい
その向かいに小さなテーブルに椅子が二つ
その先は高さ１８０センチ、幅３６０センチの木製の棚が後ろを向き、上手く目隠しになっていた
これは恐らくスペイン製、かなり重そうだ


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