打算-60/私が欲しい？

ラブラスリーにユェミーと入ろうとして、秀一はピタリと歩みを止めた
「おっ、専務・・・誰と一緒だ？」
・・・・・思い出した。フランクフルトの小沢のワイフ
来月からニューヨークの次長・・・・・これが理由か？
いや、それだけでは余りにも・・・・・
何か有る、何なんだ？

気になって仕方のない秀一だったが、やはりユェミーが言う単なる主人思いの不倫だろうと結論付け、気付かれない様にドアから離れた



「歳を取る毎に、肉から魚になりましたね」
「その方が健康にはいいわ」
ワインもかなり入ったこの頃になると、梨佳の言葉遣いもフランクになって来ていた

「はい、でも肉も結構食べます。元々好きなのでしょうね」
「お酒は何を飲まれますか？」
「笑わないでくださいます？」
「はい」
「ビールと泡盛なんです」
「ほー、それでは次の次は沖縄料理にしましょう」
「本当に？嬉しい」


「今日のドレスを次回に着て、是非私に見せて下さい」
「着て来ます」
「あれの似合う人はそうは居ません。梨佳さんは似合います」
「周りの男がみんな見詰めるでしょうね。そして私に向く目は敵意に満ちる」
「そんなこと・・・」

その光景を思い浮かべると、梨佳はゾクゾクとして鳥肌が立って来た
男達が私の身体を嘗め回す様に見て、あれを起たせてくれる
その男達に言ってやるの
「私が欲しいの？・・・・・駄目、私はこの大野さんのモノ」

・・・・・あー、次ぎを早く誘って



その日に大野と夕方に別れてからの梨佳は、毎日が辛かった
「一週間は無理よね」
そう自分に言い聞かせて我慢した
しかし、そんなに待つ必要は無かった
思いも掛けず、２日後の夕方にその電話が携帯に架かった

「梨佳さん、明日の午後、昼食をお付き合いして頂けますか？」
「はい。何処に行けば宜しいでしょう？」
大野が伝えるその場所は、前回と同じホテルのロビーだった


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