打算-56/個人のお礼

「いいえ、もうあと半月になります。おめでとうございます」
「いやいや、これも小沢君を初め、同じ派閥の皆さんのお陰と思っておるんです」
「何時も主人が申しております・・・僕の出世は大野社長と中田常務のお陰だと」
「小沢君は、私の次の社長になる中田君の右腕ですからな」
・・・・・へー、紳士なんだ。腰に手を宛ててドアにエスコート


「私はここに座っておりますので、お決め下さい」
「はい、有り難うございます」
「ああ、金額の制限はありません・・・プロを雇えば最低５・６０万円はしました」
・・・・・えっ？６０万までいいと言ってる

結局はその半分ほどのスーツに決めた
と言うより、気に入った２着を着て、大野に決めて貰おうとした
２つとも身体の線が出易く、胸の谷間が大きく見える

１つはライトグーレー
「よく似合っていますよ」
もう１つは光沢のあるダークグレー
・・・・・凄くセクシーでこれが好き
「梨佳さんの綺麗なラインが出て、素敵でセクシーです」
どちらも一寸したパーティなら着て行ける
然も身体にピッタリで、手直しも必要が無かった


梨佳は大野が店員と話しているのを聞いていた
「その２つを包装してくれるかな？」
・・・・・何よ７０万円近くになる。たった半日、ドイツのお客様夫婦１２名の接待で？
その内の二人とは、向こうで会っていた

ドイツでも毎月のようにパーティがあり、ホスト役には慣れている
これも主人の出世の為と思えば、苦にもならない

それどころか、梨佳にとっては楽しかった
・・・・・だって、美味しい食事に美味しいお酒
食事の殆どがフランス料理だった
ドイツの料理にはうんざりで、イモとソーセージ以外何も無い
但し、さすがにビールだけは美味しかった


「今のは会社からのお礼です」
「有り難うございます」
「これからは私個人のお礼に、お食事をご馳走させて下さい」
「そんなにして頂いては、申し訳が有りません」
「宜しいかな。貴女の接待に皆さん大喜びで、５００億円の注文をくれたのです」
「・・・・・？」
「あのスーツ２着などでは到底足りないのです」
「でも・・・・・」
「その代わり、これからも手伝って貰います・・・宜しいかな？」
・・・・・その度にドレス？いいえ、そこまでは無理ね


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