打算-59/梨佳の打算

冗談めかして誘ってくる大野だったが、その目付きで本心だと梨佳は受け取った
サラッしはしていても、この胸に張り付き突き刺さるあの目
それを感じて、乳首が先程から痛い位に起っている


梨佳は、夫とのセックスで満足した事が無かった
それを隠そうと、何時も演技をして往く振りをしていた
子供が二人出来、上の息子が中学に入ると完全に無くなった
・・・・・その方が楽でいい。バイブなら往かせてくれる

夫を愛して結婚したのでは無い
東大経済卒、これだけが気に入ったのだった
然も勤める会社は超一流で、会長以下の幹部は同窓
トップは無理でも役員にはなれる、そう考えての結婚

考え通り、同期の誰よりも早くここまでは出世してくれた
しかし、早く部長にならなければ意味が無い
部長になって初めて役員へのスタート台に立てる

夫の和真が次長になって５年、ここ一年でなれなければ部長で終わる
その事だけは、梨佳にも理解出来た
・・・・・あと一年なのよ
そう考えて大野の目を見詰める梨佳の目も、また誘っていた

実は大野も秀一も小沢が仕事の出来るのを認めており、次の部長と決めていた
そんな事は勿論、梨佳が知る由も無い


「駄目ですか、分かりました。慌てない事にします」
「諦めるでは無く、慌てない、ですか？」
「はい。諦めるには勿体無さ過ぎます」
「あら、どうして？・・・・・こんな中年のおばさんを」

「梨佳さん、貴女はご自分に魅力が有るのが分かっているのですか？」
「いいえ、ちっとも」
そう言う梨佳だったが、４０歳になってしまっても、まだこの身体には絶対の自信があった
Ｄカップの胸は垂れず、ヒップは上を向いている
その維持の為にドイツでも毎日ジムに通い、胸筋と太腿、ヒップのメニューをこなした


「なら今日は諦めますが、次回はまた口説きますよ」
「どうぞご勝手に」
「さすがは外大出だ。頭のいい人は話もすぐ返って来て好きです」
「東大の経済には叶いません」
「いいえ、私は外大のドイツ語科なんて受かりませんでした」
「私だって東大なんて無理でした」

「食べ物では何が一番好きです？」
「お肉。大野さんは？」


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