打算-46/解って来た

シンガポールでの仕事は、秀一にとって暇過ぎた
そのお陰で自宅にトレーディングルームを作り、かなり儲ける事が出来た
日本に居れば、ここまでは無理だったに違いない


１年目で飛躍的に売り上げを伸ばし、２年目で取締役の支店長になっていた
４７歳で上場会社の役員になったのだ

秀一は負けん気が強く、一番にならないと気が済まない
当然、大野の次の社長になる積りで居た
大野もそれが分かっているから面白い
二人の男はそれぞれの能力を認め合っていた


秀一と雅恵との仲を知り、大野は奈々子をものにしようとした
単なる大勢の一人で、仕返しの積りが唯一になってしまっただけ
これで対等になり、大野も秀一に対するわだかまりが無くなった
その事を秀一は初めから解っている

秀一が解っているのを、大野も分かっていた
残念な事に、秀一の方が仕事が出来るのを認めてもいたのだ
シンガポールへの栄転も、その為なのを秀一は知っていた
「男とは面白い動物だ」


「えっ、何か言った？」
「ユェミーはいい女だなーって言ったの」
「そうよ、貴方にだけいい女になるの」

「それは有り難う。明日はどこに行く？」
「横浜に連れて行って」
「よし解った。山下公園と丘公園で海を見て、元町を歩いて夜は中華街でいい？」
「ええ、その積りよ」

「ほかに行きたい処は？倉庫街とか伊勢崎町、馬車道は？」
「今は元町なの」
「また廻って？」
「そう。解って来た様ね」
・・・・・この馬鹿にした言い方、くそー


翌日、秀一はＪＲで横浜に来た
と言ってもユェミーがこちらに来る前から調べて決めている
タクシー何て言ったら、それこそ何を言われるか決りきっていた
・・・・・「貴方には長生きして欲しいし、健康に良くて然も安い電車です」
「日本の鉄道は、世界でスイスと１・２を争うのよ」
解っているよそんな事は

中華料理を食べながら聞いてみた
「どう、日本の第一印象は？」
「大きくて煩くて、でも凄いパワーを感じる」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第二部　　完


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