打算-57/デブの親父

パーティのホスト役をまた出来ると思うと、梨佳は嬉しかった
目立ちたがり屋で、虚栄心の強い彼女なら当然だった

「はい、ドイツでも毎月のようにしていましたので、苦になりません」
「それではお願いします。食べ物は何がお好きですか？」
「好き嫌いはありません」
「それでは、普通の洋食で宜しい？」
「はい、結構です」


「レ セゾン」ではなく「ラブラスリー」にした
マネージャーが飛んで来る
確か好みは魚より肉と書いてあったのを思い出し、前菜とスープ、それに肉を任せると答えた
勿論、ワインも

「お酒はいける方ですか？」
「お付き合い程度には」
「ほー、ならかなりですな」
「ドイツではもっぱらビールでした」
「なる程。あそこの美味い物はビールだけですから」
「そう感じました」
「ソーセージとイモだけだったでしょう？」
「ええ、そうでした」

「イギリスも無いですな」
「はい、フランスとイタリア、それにスペイン位です」
「そうそう」
「和食は？」
「大好きです」
「ほー、では近い内に伊勢長にお付き合い下さい」
「はい、有り難うございます」


「これからは仕事抜きで行きませんか。無礼講で・・・堅苦しいのは嫌いなんです」
「はぁ」
「旦那さんの上司と言うのを忘れて欲しい。貴女の様な素敵な女性と一緒なのに、折角の食事が不味くなる」
・・・・口が上手い事

「いいえ、お世辞ではなく本心」
「こう見えても、面白いおっさんなんですよ・・・・・ただのデブの親父」
・・・・・そんな事ない。デブじゃ無くガッチリしてる

「デブじゃないとは嬉しい」
「肩書き抜き。いいですか？」
・・・・・そう言われても無理よ

「無理ではないの」
「あのー、読心術をされるのですか？」
「少しだけ」
「へー、今私、何考えてます？」


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