打算-48/磨いた

月に一度、大野の手元に調査会社から届く、世界中の幹部のレポート
秀一のレポートは、驚きの連続だった

金融関係の企業にとって、社員の不正は日常茶飯事
小さな不正などどうでもいい
会社が揺らぐ程の損失だけは、絶対に防がなければならない
その為、徹底的に調査させる
調査されている事はみんなが知っていて、抑止効果にもなっていた


「孤児を？」・・・・・物好きだな、あいつも。自分の生い立ちか？あいつそんなにナイーブか？
資料の中に、写真が添えられていた・・・・・みすぼらしい女の子、か
「飛び級」・・・・・少しは頭がいいのだな
「国立大を３番目の成績で合格」・・・・・ほー、大した子だ

「いい家だなー、これは」・・・・・一体幾らアルバイトで稼いでいる？
「このマンションも凄いなー」・・・・・梅田のヒルズか
そして一番驚いたのが・・・・・

「何、あの大学をトップで卒業？」・・・・・これは凄い
写真を見てまた驚いた・・・・・ほー、５年でこれだけになるのか
女は怖い・・・・・いや違う、中田がここまで磨いたんだ

「高校も行っていない、１６歳の子に素質を認めたのか？」
「そんな事がどうして分かる？」
・・・・・俺には恐らく分からなかった


あいつは俺より遥かに頭が良いし切れる
「確か大学も３・４番で卒業した」
俺なんか下から数えた方が早かった
良い先生に就くと伸びるのだな
但し、素質があればだ

「何故うちに入れない？」
幹部社員に育てる為、学校へ行かせたのでは無いのか？
「何故、京大の大学院？」
いや、そこを出てから入れる積りだ

シンガポールを支店から支社にして、そこの社長か
中国以外の全アジアを統括する・・・なる程
大野はそこまで読み切っていた
この大野もさすがに切れる
事実６年後にそうなり、但しユェミーは副支社長からのスタートだった


「往きかけているから、ねえ一緒に、今よ、いまぁー」
そんな考えを巡らせていた大野の下で、奈々子の身体が激しく揺れていた
大野も仕方なく少し遅れて出す事にした
「あぁー、でてるー」


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