打算-14／香水

大野と部屋で別れて電車に乗っても、靄の掛かった頭がすっきりしない
ただ自分に言い聞かせる・・・・・受験のお礼、一度だけ

夕方家に帰り着いても、奈々子は何も手に付かなかった
次々に甦ってくるその光景

「あんなに大きなのが入った」
あんなに何回も立て続けに感じたことなど、今まで一度もない
「然も感じ方が深くて長くて」
主人ならとっくに終わっている時間なのに、全く往かなかった
何度目か最後の時に口で受留めるまで、全然出さなかった

今も口に残るその感触・・・彼の動き回る舌、頬張った大きいペニス、そしてあの迸り
彼のその匂いはまだ鼻に残っている
バスルームで見た垂れ下がったペニス、普通の勃起した大きさがあった
あんなに大きなペニスがあるんだ

「忘れられるだろうか？」
「誘われたら？」
「絶対に断わらないと、絶対に・・・・・」



それがあってから、丁度一週間目に電話が架かって来た
「大野です。今日午後の奈々子さんのご予定は？」

断わるのよ・・・用事があると言うだけでいい
「夕方まで、何も有りません」
「それでは１２時に・・・待っています」

あー断われなかった、どうしよう
またあんなセックスをされたら
どうすればいいのよ
今日は断わろう・・・忘れられなくなってしまう
それなのに下着をどれにするか迷って、黒の一番セクシーなのを選んだ
そして、香水をこの前より多めにそこへ付けていた

「あー、この下着姿も褒められたい」
あー濡れて来た、どうしよう
受験のお礼はこの前で済んだ
今日は・・・・・主人の為？出世の？


今回は別のホテルの「ベルエポック」での食事だった
美味しいのかどうか、全く分からない
ただワインを多く飲んでいた

この前の行為が瞼に甦っては消えて行く
しかし、今日はこの前の様に大野は触れて来なかった
「今日は何故触ってくれないの？・・・してくれないの？」
そう奈々子が自問する


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