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夢を抱いて-13/諦め

2010年02月23日 00:15

夢を抱いて-13/諦め

そんなことがあって以来、二度と嫌がらせは無かった
その場に居た客全員が名刺交換をしたのは言うまでも無い
その中に紫野も居た
実は紫野が立つより先に志賀に立たれてしまった
紫野は少林寺4段だったが、滋賀の余りの速さに驚き直ぐに座った程だった
「私より強い・・・誰だこいつ?」
志賀も紫野の爪先立ちで直ぐに分かった様だった
「こいつも一緒か?一寸ヤバイな」
今ではいい飲み友達になっている

帰り際に封筒を渡そうとした時の事は、今でもママ陽子ははっきり覚えている
ドレス胸元を開くとじっと中を覗き、そこに封筒を差し込んだ
「気を遣わんでもええ・・・俺の仕事や。綺麗なオッパイも見せて貰ろうたし」



「紫野さんは止めておいた方がいい。ねっ、ひなちゃん、間違った事は言わないから」
「はぃ」
誰から幾ら忠告されても言われても、女は諦めないのよ
特にこの子は
それが陽子には分かっていた



「何時もお土産を頂いて、有り難うございます」
紫野が店に一人で来た時、ひなたはそう礼を言った
「気にしなくてもいいよ。どうせデッドストックばかりだから。・・・・・一曲だけ一緒に唄って」
紫野が来ると暫くして席に着いてしまうひなた
それも紫野が帰るまで離れないのだが、陽子は仕方が無いと何も言わず諦めていた


「一度食事に誘って欲しいなー」
「私はね、妻子持ちなんだ。然も愛妻家でね・・・責任が持てないことはしない」
同じ男なのに、然も外見が似ている二人なのに、こんなに違う?
歳だから?
男不振に陥っていたひなた、紫野の所為で少し変わってしまった


しかし、愛妻家だと言われたひなたは、佐藤の事を考えてしまう
いつも佐藤の奥さんに申し訳が無いと悩んでいた
私が佐藤や紫野の奥さんだったら?
また一人申し訳が無い人を増やすことになってしまう
諦めよう今の内に
そう決心するのに時間は掛からなかった

翔太にはその内父親が出来るかも知れない
出来なければ、ここままでもいい
「佐藤さんに奥さんが居なければ・・・・・」
ひなたは何回そう思ったことだろう


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