甘いヤツ-42／佐藤久美子

「いらっしゃいませ」
「先月は来なかったわね。　紫野さんご免なさい」
「いえ、とんでも有りません」

「ありがとう。　章代のこと」
「いいえ」
「彼女、元に戻った。　明るくて若々しく」
「彼女の歳をお分かりになって？」
「５０歳を過ぎている様に見えたでしょう？私とは高校からの親友。　同じ歳で４３歳」
「ご主人は一年の３分の２は外国で、二人目の子供が生まれてからは一度も」
「会う度に男性を紹介したわ。　でも、全然駄目だった」
「７年よ、７年」

「紫野さんを見た瞬間に、体が震え出したって。だから、清水の舞台から飛び降りたそうよ」
「ご主人だけだったの。　紫野さんが二人目」
「本当に有り難う」

「私は主人とは幼友達で、幼稚園から手を繋いで行っていたの」
「仲がいいの。　今でも毎週よ」


「と言う訳で、今日はコート」
「座って少しお待ち下さい」

「カシミヤでは無いわね」
「はい、アルパカです」
「いい色のブラウン。　似合う？」
「はい」
「それじゃ、これ」
「有り難うございます」



今月はどうも成績が悪い
恐らく月のトータルで、さくらにも、中村にも負ける
里美にも負けるかも知れない
予想通り里見とは毎週になった
さくらとは当然だし、章代と香里とも10日に一度は会っている
他に不定期ながら６人も居る
問題はさくらと章代と香里の強過ぎる３人
少しセーブしようと手を抜くと、すぐにばれてしまう
逆効果になってしまう
程ほどにしたいのに、許してはくれない３人
出すまで絶対に許してくれない
誤魔化しが効かない
騙されない

芳乃は大丈夫だが、その”勝負ふく”友達、
加藤亜矢子があからさまに誘って来ている
絶対にこの娘はいけない
だって、章代の紹介の友人
今までは上手く逃げては来たものの、心配だった


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