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第三節  嬉しかったこと、真央

2010年02月22日 01:17

第三節  嬉しかったこと、真央

夢を抱いて-12/いい警官

ママ、紫野さんの事、教えてください」
「彼を好きになった?」
「えぇ」
「誰だって好きになる。私だって・・・でもね、彼は諦めなさい」
「駄目ですか?」
「好きにはなってくれない」
「えっ?」
浮気は、セックスはしても惚れては貰えない。一方通行は辛いわ」

幾らひなたが馬鹿でもママの気持ちが分かった
ママ・・・?」
「そう、もうとっくに諦めたけどね。今では別の人が居るしね」
「志賀さん?」
「あら、鋭い。上手く隠してると思ってたのに」
「誰も感づいていません」
「そう、良かった」


この志賀昭造、46歳で横浜西北署の署長をしている
こずかい稼ぎをしようとして筋ものが店に来た時、たまたま転勤祝いで銀行の店長達と店に居た
すくっと立ち上がると、三人を前にして啖呵を切った
「てめえら、ドラッグだけで十分やろう?」
おっさん、かたわになりたいのか?」
「それは嫌やな」
「なら引っ込んでな」
「そう出来ん性分でな」

一人が殴りかかった瞬間に二人が床に転がっていた
一人立っている年長の喉を掴む
「一生車椅子で暮らしたいか?女は二度と抱かれへんで。それとも死ぬまで流動物しか食べられん様になりたいか」
「どっちがええ?」

すらすらと何の抑揚もなく、相手の目を見据え静かに言う
店に居た全員が寒気を感じた
「どっちも嫌やわな?このまま大人しゅ帰って、二度とここには来んと誓えるか?」
「・・・・・帰ります。許してください」


大阪から昨日、転勤して来たばかりでまだ誰も知らなかった
ここまでを聞くと、いい警官に違いない
しかしこの志賀、転勤さされた理由は汚職
組の便宜は図る、風俗の手入れの情報を流す、容疑者に怪我をさす事などは当たり前
風俗なんて害にはならん」
これが志賀の考え
但し、クスリにだけは容赦しなかった

警視という役職の為、府警も表に出るのが嫌で握り潰し転勤にした
阪大出のキャリアで、本来なら国家公務員一般職である警視正にとっくになっている
頭は良く運動も武道にも長けていた
剣道柔道も有段者で、特に空手は4段の腕前だった
素手のヒンピラ三人では、相手になる訳がない
女癖が祟り女房には離婚され、今は独身


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