甘いヤツ-43／加藤亜矢子

なんて想像していると・・・
「紫野さん、ご無沙汰」
「いえ、先週も来て頂きました」
「そうだったっけ？」
「今日も、勝負服」
「これはまた、勝負をする方が多いのですね」
「そうなのよ、嫌になる」
「加藤様なら勝負なんて、必要ないのでは有りませんか？」
「うーん、相変わらず口が上手いんだから」
「何時も良いものばかり勧めて下さるのね」

「ああ、この前に中村さんとパーティでお会いしたの」
「あのグリーンのドレスも紫野さん？」
「はい、そうだと思います」
「やはりね」
「あれに勝てるのが欲しかった」
「この前の黒のドレスは負けていませんが」
「そうね。　確かにあれも良いけれど」
「これなら勝てるかしら？」
「私の口から答えを言えと？」
「そうよね。　お客様同士ですものね。これでいい。　気に入ったわ、これ」
「中の下着もお願い」


「うわー、これ殆ど透明」
「それ位で無いと勝てません」
「うん、着けて良くって？」
「勿論。　さあどうぞ」

カーテンの向こうから聞こえる声
「丸見え、これ。　ほら」
と、カーテンが開く
「お似合いですよ」
「厭らしいわね、これ」
「いえ、セクシーです」
「わたし、どう？」
「だから、セクシー」
「それだけ？」
「私にとってセクシーは、女性に対する最高の言葉です」
「そうか、ふーん」

「今夜お食事、ご一緒して頂けません？」
「申し訳ありません。　今日は用事があります」
「ふーん、だったら明日は？」
「明日は、ミーティングで残業なのです」
「ふーん、明後日は出張？」
「いいえ、予定は有りません」
「だったら、月曜日の夕方に電話します」
「はい、お待ちしております」


有り難うございます、とお礼をして送る京介
最高の客の一人を無くす訳にはいかない
食事だけで上手く終らせないと


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