甘いヤツ-38／高橋香里

「いらっしゃいませ。　何時も有難うございます」
京介が何も言わなくとも、フィッティングルームの前に座る香里
「へー、ツィード？」
「はい」
「ハリス？」
「良くご存知ですね」
「いいわ、これ。　着易いし軽いわね」
「そうでしょう？」
「袖を３センチ、下はどうしましょうか？」
「これでいいんじゃない、どうかしら？」
「ちょうどいいと思います」
「それじゃ、袖だけ」
「はい、３日後にお渡しさせて頂きます」

「いつも有難う」
「いえ、それは私どものいう台詞です」
「少しは有難うって思って？」
「勿論」
「それじゃ、今日食事に誘って下さる？」
「８時３０分に、あざみ野のドトールで宜しいですか？」
「ええ、待ってる」



５分前に店に入る京介
一番奥の右端
“へー、タバコを吸うのか”
管理職にしては珍しい
「タバコ、嫌い？」
「私も吸うよ」
「あー、良かった。　この頃は肩身が狭くて」
「確かに。　子供が見える所では吸わなくしているよ」
「そうか。　喫煙場所でも、私もこれからそうする」

「何を食べたい？」
「何でも」
「好き嫌いが無い？」
「ええ、男と違って」
「男は選り好みをする？」
「当然」
「私は好みの方？」
「分かっているくせに」

「最初の時から誘って欲しかったのに、全然なんだもの」
「痺れを切らしして、今日？」
「そう。　貴方からは絶対に声を掛けないのが分かったから」
「大事なお客様ですから」
「客とは、しない？」
「そうしようとしているよ」
「何か微妙な言い方」


*****************************************
ブログの方にも来て下さい
http://kyoka2.blog18.fc2.com/blog-entry-1.html
*****************************************