甘いヤツ-14／渡辺芳乃

「いらっしゃいませ」
「仕事用ですか？　それともプライベート用でしょうか？」
「パーティのドレスを探しています」
「中村様のご紹介ですね？」
「はい、そうです」
「紫野さんに任せれば、私くしをましにしてくれるって」
「中村さんが　”まし”　と言ったのですか？」
「はい、ましって」
「口が悪いですね、彼女は」
「そうでしょう？　でも当っているから」
「何処が？」
「私くし、ブスだし、センス悪いし」
「ブス・・・貴女がブス？」
「はい」
「貴女は不細工では無いですよ。ヘアースタイルとお化粧が似合っていないだけ」
「こちらへどうぞ。少しお待ち下さい」


「あらー、凄く素敵、このドレス」
「着てみて下さい。終わったら私に見せて下さい」

「着替えました」
「似合っていると思うでしょう？」
「分からない」
「そう。　時間はあと何時間頂けますか？」
「夕方までなら」
「解りました。さあ、ヘアースタイルとお化粧に掛かりましょう」
「えっ？」
「私に任せて頂けるのでしょう？」
「そう、です、けれど」



「着ているドレスに合わせて。スッパリと短く切ってもいいよ」
「化粧も、ね。何しろセクシー。解った？」
「男という男がみんな振り向く様にしてくれ。自信は？」
「紫野さん、自信ってあたしに言う？」
「悪い。ご免。彼女、自分でブス、魅力が無いと本当に思っているんだ」
「何で？可愛いよ、彼女」
「だろう？だから頼む」
「迎えに来る？」
「ああ」
「三時間頂戴、電話するわ」


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「ほー、さすがだな、てつは。ゲイにして置くのが勿体無い」
「合格？」
「ああ、７０点やるよ」
「７０点ね。１００点ってどうすればいいの？」
「中身」
「ならいいや。あと３０点は紫野さんがするんでしょう？」
「ああ、洗脳する」
「月に２回うちに来させて。化粧を基本から教え込む」
「中身と服は紫野さんに任せた。ただし、メーキャップとヘアーはあたしがやる」
「いい女になる、きっと震い付きたくなる女に」


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