甘いヤツ-21／ミシュラン

「惜しかったね。　あと８万円で２度勝てたのに」
「悔しいんです、　たった８万円やのに」
「その８万が大きな差なんや」
「悔しい。　絶対に勝ってみせます」
「なるべく早く頼むな。　そうや無いと辞めてしまうさかい」
「えっ、紫野さん辞めはるんですか？」
「まだ当分は居るけど」
「私が勝つまで居て下さい」
「そんな事約束したら、あと１０年居なあかん」
「そんなに待たせません」
「解った。　はよーしてな」



２ヶ月目からポツリポツリと出て来た
「勝ちましたよ。　昨日で週２回」
「うん、負けたな」
「私、ハイアットのキュイジーヌでご馳走して頂きます」

「恵比寿のロブションでいいです」
「いいです？」
「これでも遠慮しているんですよ」

そうかい、そうでしょうとも
ミシュランばかりじゃないか
馬鹿かお前等
別に大した事ないのに
フランス人と日本人は味覚が違う
舌が違う
感性が違う
まー、それを確かめるのにはいいなー

月に２・３度は何処かの子と食事です
３ヶ月目に遂にナンバーワン上田に負けた
それも週に３日
そして、その次の週は２日
週と月の売り上げも危ない所だった



「何がいい？」
「お好み焼きとビールにして下さい」
京介は好物をこの前さくらが来た時に話した

「私は昔から贅沢な食べ物は駄目なんです」
「珍しいね。　どうして？」
「私、弟と一緒に中学まで孤児院で育ちました・・・・・」


聞いていて京介は腹が立った
泣きそうだった
心では泣いていた
しかし、口に出た言葉は違った
「同情なんてしない。　もっともっと悲惨な人達を私は知っている」
「同情なんて、して欲しく有りません」
「そう言うと思った。　京都人が美味いという店に行こう」


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