甘いヤツ-28／山下里美

「すぐにトップテンにはいれるよ、君は」
１５１番を隅に連れて行き、そう言う京介
「本当に？」
「ああ本当に」
「どうすればいいのですか？」
「私を今日一日見ていたね？」
「真似をしなさい。　但し君風にアレンジをしてね」
「自然に口から出るように、家で声を出して練習すればいい」
「分かりました。　練習します」
「明日と明後日もここに来ること。　私から電話をしておく」
「あと二日ホテルだから、これを」
「大阪に帰って清算すればいい」



「聞いていたのか？」
「すみません。　彼女伸びますか？」
「ああ、トップになる」
「それじゃ、私負けちゃう」
「そうだね」
「悔しいわ。　私どうすればいいのです？」
「真似る、自分のものにする、練習する」
「そうですね。　します」


「紫野さんの予想通り、山下さんは２７番に上がりましたね」
「そうだね。１０番以内に入って来ると思っていたんだが」

言い終わると、梅田店に電話を掛ける京介
「山下君、２７番になった感想は？」
「紫野さんに教えられた様にしました。　こんなに上がってビックリしてます」
「嬉しい？」
「はい、勿論」
「私は当然トップ１０に入ると思ったんや。　それが２７番」
「ガックリやな。　２７番なんて１５１番と変わらへんぞ」
「ベストテンに来月は入れ。　解ったな」
「はい、そうします」


全く褒めない
労う事もない

「少しくらい褒めて上げればいいのに」
「あいつは褒めると駄目になる。　トップになるまで絶対に褒めない」
「上田さんに、山下さん勝てるのですか？」
「ああ、あと３ヶ月」
「３ヶ月で？」
「何が私と違うんです？」
「持って生まれたもの」
「そんな」

「仕方がないんだ。　こればっかりは」
「遺伝子に組み込まれている」
「上田さんも？」
「いや、彼女は努力」
「努力より、遺伝子？」
「そう。　努力では勝てない。何万、何十万に一人」
「だったら、紫野さんも？」
「だと思う」


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