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【魔法少女っ】31-1、芋煮会。
2011年09月11日 06:32
芋煮会。
秋の河原に集まって芋煮という料理を作って振る舞って、BBQ的なバカ騒ぎする、東北地方の風習のひとつである。
起源は北前船なる収穫を京に運ぶ船の……なんだっけ。
現在ではいわゆるひとつの「親睦を深めるイベント」のひとつとなっている。
そんな芋煮会に、中等部演劇部が招待されたわけだが、イベントの性質上、タダでゴショウバンに預かるわけには行かない。お菓子を持ち寄ったりとか、鍋を手伝ったりとかを求められる。
芋煮会の主催は高等部の演劇部。芋煮会には大抵大義名分が付く(例えば野球部だと甲子園のシーズン終わってお疲れさん!とか)が、高等部演劇部にはんなものない。
強いて言えば「芋煮会する!」が大義名分だ。つまり純粋にバカ騒ぎたいらしい。
現に「お菓子かよ。酒持って来なかったのか?」という部員がいる始末。実はそこにも理由がある。
「芋煮にお酒は必要なのは承知なのですが、未成年ですので、入手が困難なのですわ」
「そこをなんとかできるんだろ?羽前のお嬢ちゃん」
「オイコラ!お嬢様を愚弄すると許さんぜよ」
「ひぃっ」
刃物で演劇部員を脅すサラ。よく見てみたら、刃物はお魚なのだが、脅される側は本当にに刃物をつきつけられた顔をしてる。
「さすがに先輩がたは演技上手いなぁ」
小春は調理を手伝いながら微笑む。
「高瀬っちはワードロープなんだろ?そういうの演劇部には心強い才能だよね。ウチにも欲しいなぁ」
「鍋が2つありますね」
茜が気付く。大きな鍋を2つ用意してある。
「山形風と仙台風、二種類作るのですよ」
と、麻衣子。
芋煮はその名の通り、芋を煮た料理だ。この時季だから里芋がメインだが、山形芋煮は牛肉と醤油仕立てのすき焼きっぽいもの、仙台芋煮は豚肉と味噌仕立ての豚汁っぽいもの……といった具合に地域差がある。
贅沢を楽しむのが山形風、日常の延長のようなほんわかさが仙台風と言ったところか。しかし、どちらかにすると異論が出てしまうので両方作ってしまうユーザが近年増えている。
「食べ盛りとはいえ、全部食べれるのでしょうか」
鍋の大きさと参加人数で心配する茜。
「……心配ない。……むしろ足りないかも」
野菜を切りながら、有希が答えた。
「剰ったりしたら他の団体や通りすがりに振る舞ったり交換するのも芋煮会の醍醐味ですよ」
と、麻衣子。
「……剰ったのでアレンジ料理をするのも、オツ」
玉うどんやひやご飯やチーズを見せる有希。
「こんなに食べたら太るですっ」
その量に唖然とする茜。
「……大丈夫。……ここで精をつけて、学園祭、頑張ってもらう。……麻衣子には中学最後の学園祭。受験生になる身ならなおの事、頑張ってもらう。……それに……」
有希は茜に耳打ちした。
「最近、千歳に元気がない。立ち直って欲しい」
「内緒にすることではないですよ、先輩。わたしも羽前さんを案じてるんです。だから練習用の台本を渡したんです」
鍋に食材を入れながら、麻衣子は言った。
「……わたしは麻衣子のような機転は利かない。……ストレート過ぎたか」
有希は先輩魔法少女として、千歳とは付き合いがあるから、演劇部を巻き込まなくても元気付ける事は出来ただろう。……ここになんか不器用さが滲み出ていた。
だが不器用で良かったのかもしれない。
「日本酒はないのかよ」
「羽前グループはワイナリー偏りなので」
サラがワインを振る舞ったりしてる。良い子の諸君!未成年の飲酒はダメって事になってるぞ!◎☆
続く!
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