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2011年07月29日 16:23

ショーツをつかんだ優佳の右手に嫌な感触があった。


(何これ・・・)


生暖かくヌメリ気のある感触。


それは優佳も触れたことのあるものにそっくりだった。


想像したくないが記憶は勝手に意識にそれを上らせる。


(精○・・・)


そう思った時、あの独特な匂いが鼻に届いていた。


(やっぱり! でもいったいどうして?夢じゃなかったの?私、襲われてたの?)


一瞬の間を置いて、優佳は飛び上がるように立ちあがりバスルームへと駆け込んだ。


洗い場で着ているパジャマを脱ぎ捨て、シャワーの蛇口をひねると股間に向かって強い水流をぶつける。


(やだ、やだ、やだ・・・)


最悪のことを考えると気が遠くなるようだ。


(どうして?だれが?いつ?)


右手の指2本でそこをかき出すように洗い流す。


こんなことをして意味があるのかはわからなかったが、そうすることしか優佳にはできない。


かなり長い時間をかけて洗い流した後、ようやく身体の汗を流し始めた。


つづいて、すっかり濡れたパジャマを確認した。


自分の中から流れ出た男のモノが付着しているだろうか?


ズボンの股の部分を開いてみる。


(やっぱり・・・)


あの嫌な匂いが鼻に届いた。


シャワーで洗おうとも思ったが、優佳はそれをしなかった。


(もう、これは着れない・・・)


捨ててしまおうと決心した。


立ち込める湯気で曇ったガラスを手でふきとり、優佳は身体を確認し始めた。


(別に変わっていないわ・・・)


どこにも怪我などした様子はなかった。


革のベルトを引きちぎるような力で無理強いされたのなら、どこかに怪我があってもよさそうなものだ。


あれは夢だったのか。


それなら、どこでされたの?


いつされたの?


そう思いながら、身体を反転させ鏡に映った背中を確認した。


凄い力で押さえつけられたは見当たらない。


そのまま視線を下げていく。


(!)


お尻と太腿の区切り目あたり。


傷なのか痣なのか、昨日発見したそれはさらに大きくなっていた。




夢・・・?


ベッドの中で目を開くと外はすっかり明るくなっているらしく、カーテン生地を通した太陽の光が部屋を明るくしていた。


時刻を確認しようと上半身を起こそうとするが、腕に力が入らない。


白い天井がグルグルと回っていた。


(・・・眩暈がする)


顔だけ横に向けて壁にかかった時計を見ると、短針が8時を少し回ったところを指していた。


(いけない・・・遅刻だわ)


大きく息を吸い込み、再度立ち上がろうと試みた。


かろうじて上半身を起こすことはできたのだが眩暈は治まってくれなかった。


(熱、あるのかしら?)


なんとかベッドから這い出して薬箱から体温計を取り出すと、パジャマの合わせ目から脇へと差し込んだ。


そのまま絨毯の上に座り込み、計測終了の合図を待つ。


立ち上がっていると転んでしまいそうだったからだ。


ピピピ・・・


37.2℃


デジタル数字が表示していた。


微熱ね・・・)


優佳は署への出勤を迷った。


いつもならば、この程度の熱で勤務を休んだりはしない。


ただ寝過ごしてしまったことと、昨夜見た夢のせいで出勤することを躊躇っていたのだ。


(どうせ遅刻の報告をしなければいけないし・・・)


いっそのこと休んでしまおうかと思う。


ベッドの枕元に置いた携帯を取りに行こうと、ソファーに手をかけふらつく身体を持ち上げる。


(なに・・・?)


ソファーの上には破られたパンツスーツが放り投げられていた。


赤い革ベルトが引きちぎられていた。


(うそ、そんなはずない。だって昨日は確か・・・)


優佳は昨夜のことを懸命に思い出そうとした。


(そうか・・・夢だったんだ)


夢から覚めた優佳が確認したこと・・・それもまた夢だった。


(でも・・・でも・・・)


パジャマズボンに手を差し込んでみる。


優佳の指に直接アンダーヘアーが触れた。


ショーツを穿いていなかった。


さらに奥へ指を進める。


(いやだ・・・)


ねっとりとした液体をそこに発見した。


優佳はよろめきながらバスルームへ向かった。


熱いシャワーで洗い流そうとしたのだ。


洗い場でパジャマを脱ぎ捨て鏡に背中を映す。


そこに大きな掌の跡があった。




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