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2011年07月25日 09:48

(夢か・・・)


ベッドで目を覚ました優佳は枕元に置いた携帯電話の開く。
液晶画面には5:00と表示されていた。


(もう!)


中途半端な時間に起きてしまった自分自身が腹立たしかった。
もういちど寝ようかと思ったが、優佳はベッドから起き上がった。
ぐっしょりかいてしまった寝汗が優佳を立ち上がらせた理由だった。
バスタオルで汗を拭おうとパジャマを脱ぎ捨てた優佳だが、いっそのことシャワーを浴びることにする。
あまりの汗の量が下着まで濡らしてしまっていたからだ。
熱めのシャワーを頭から浴びながら優佳は夢を思い出した。


・・・


最終電車を降りた優佳は寝静まった住宅街を自宅マンションに向かって急いでいる。
最寄駅から優佳の暮らすマンションまではゆっくり歩けば20分ほどかかる道のりだ。
何軒かにひとつは、まだ窓から明かりが漏れていたが、この時間の住宅街からは何の音も聞こえてこない。
静寂が優佳の足を速めていた。


カツカツカツ・・・


低いヒールの踵がアスファルトを鳴らした。
静まり返った住宅街にやけに大きく響いて聞こえる。
ただまっすぐ前を見つめながら歩いた。


道のり半ばに差し掛かったころ、優佳の耳にまったく異質の音が届いてきた。


(・・・? 何? なんの音?)


ヒタヒタヒタ・・・


それは耳にしたことのない音だった。


(どこから?)


足を止め、左右と背後を確認した。
住宅街に作られた小さな公園左手に見える。
面積の割りに大きな木が立っていた。
日中、子供を遊びにつれてくる母親たちには心地よい日陰を作ってくれる。
しかし深夜の大木が作る影は暗闇の中に更に濃い闇を作り、人を寄せ付けない空間を生み出していた。


その、濃い闇から聞こえるのだろうか・・・


優佳はジッと目をこらして大木の作り出す影を見つめてみた。
しかし、目には何も見えてはこない。
さっきまで聞こえていた、あの音も届いてこない。
風に揺れる枝葉が刻々と影の形を変えている。


優佳は気を取り直して自宅マンションに向かって歩きはじめた。


カツカツカツ・・・


優佳の足音が間隔を狭めていた。


道の先に6階建てのマンションが見え始めた。

あと3分もかからない。
ここまで来れば大丈夫と安堵の息を吐き出した。



・・・


熱いシャワーが優佳の体温を上げ、ようやく血圧も平常値を示すまでに回復した。
大きめのバスタオルで軽く身体を拭うとそのままドレッサーに向かった。
フェイスタオルで濡れた髪を叩くようにして水気を吸い取りドライヤーに手を伸ばした。
スイッチをONにしようと思うのだが、その気力が出てこない。
鏡にはバスタオルからはみ出した白い胸の膨らみが映っていた。
さほどボリュームのない乳房だが、きつく巻いたタオルは実物以上にそれを大きく見せていた。
優佳は鏡に映る自分の姿を眺めながら、夢の続きを思い出した。


・・・



ヒタ、ヒタ、ヒタ・・・


また聞こえる。
今度は近くに公園はない。
道の両脇にはマンションと民家だけが並んでいる。
真直ぐに続く道には横にそれる路地もないはずだ。
聞きなれない音は背後から聞こえてくる。
それ以外ありえない。
ブルッと身震いをした。


ヒタ、ヒタ、ヒタ・・・


奇妙な音は次第に大きくなっている。


(もしかして、すぐ後ろに?)


カツカツカツ・・・


優佳の足音も速くなる。


(後1分・・・)


ヒタヒタヒタ・・・


追いかける音も速くなる。


マンションエレベータが一番危険かもしれない。いっそのこと声をかけてしまおうか)


仕事がら、そんなことを思ってみる。


・・・


優佳は警察官だった。
しかも防犯課に所属する巡査部長だ。
性・的犯罪の予防
未成年者違法行為予防
大学を卒業して3年、何度も痴・漢を摘発してきた。
だから、その類の男の心理はよく知っているつもりだ。


・・・


しかし、優佳はそれをしなかった。
幸い、エレベータが1階に停まっていたからだ。

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