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2011年07月26日 17:08

上向きのボタンを押すと、すぐに扉は開いてくれた。
身体をエレベータに入れる前に優佳は背後を振り返った。
人影は見当たらない。


(ふ~)


音を立てないように小さなため息をつく。
目的のフロアボタンを押して扉を閉じる。
エレベータは各階の丁度真中に位置していた。
優佳はエレベータを降りると急ぎ足で自室に向かった。
優佳の部屋は5階の一番奥にあり、すぐ目の前は非常階段だ。
無事に自室前にたどりついた優佳はバッグのポケットから鍵を取り出すために顔を下に向けた。


ヒタヒタヒタ・・・


(また!)


身体が硬直した。
奇妙な足音は反対側の突き当たりから聞こえてきた。


(あっちにはエレベータも階段もないはずなのに、いったいどうやって?)


急に寒気が襲ってきた。


(違う。これは人間の足音じゃない。)


ようやく指先に鍵が触った。


ヒタヒタヒタ・・・


(来る・・・近づいてくる・・・)


いそいで取り出すと鍵穴に差し込んだ。


ガチャ


金属製の扉を開くと、背後を振り向かずに部屋に飛び込んだ。
二重ロックをかけドアチェーンをセットし終わると、優佳はドアに耳を当てる。



(・・・)


奇妙な音は聞こえない。


「はあ~」


今度は大きな音を立ててためた息を吐き出した。


(なんだったのだろう?)


そう思いながら冷蔵庫を開け、缶ビールを取り出しそのまま口をつけて飲み下していく。


「ふ~」


半分ほど残った缶ビールを右手に持ったままリビング兼寝室に戻り、デスクにおいたノートパソコンを開いた。
缶ビールを横に置いて椅子に腰を降ろそうとしたその時、突然背後から抱きかかえられていた。


「っっううう」


声にならない恐怖が優佳を襲った。

支え上げられた優佳の両足は床から離れて宙に浮いている。
警察学校で習った護身術を思い出し、背後の人間の脛を踵で蹴飛ばそうとした。
しかし、金縛りにあったように身体は動いてくれなかった。


(どうして?)


どうやって侵入して来たのか、どうして身体が動かないのか、優佳にはわからない。
そのままベッドに運ばれて、うつ伏せに押し倒される。
パンツスーツのベルト部分に大きな手が掛かると、恐ろしい力で皮のベルトごとパンツを引き千切られてしまう。
グレーのスポーツショーツに包まれた丸いヒップが露わになっていたはずだ。


(誰・・・?)


首をひねって相手の顔を見ようと思うが、咄嗟にそれを止めた。


(顔を目撃したら殺されてしまう)


死に対する恐怖が貞操を奪われる怒りを上回っていた。
太腿をつかんだ大きな掌が左右に開いていく。
強く握られた内腿に痛みが走った。


(爪・・・?)


位置から考えると親指の爪が当たっているのだろうと思う。


「い、いたい・・・」


優佳が小さく呟くと同時に、硬く大きなものがショーツの上から花園に当てられた。


「あ、ああ・・・やめて」


ぐ・ぐぐぐ・・・


(うそ・・・入るわけない!)


それはショーツごと優佳の体内に侵入し始めた。



・・・



そこで夢は終わった。


ドレッサーの前に腰を下ろしボウッと夢のことを思い出していた優佳の意識が現実に戻ってくる。
それにしてもリアルな夢だった。
気を取り直した優佳はドライヤーで髪を乾かし始めた。
仕事がら耳の下で揃えた短めの髪は瞬く間に乾いていく。


(わたし欲求不満かしら?でもあんな形で・・・)


細い両腿を力をこめて押し付ける。
急に疼き始めた身体を止めようとしたからだ。


(いやね・・・)


明らかに濡れてしまっていることが優佳自身わかっていた。
髪を乾かした優佳は身体に巻いたバスタオルを勢いよく剥ぎ取って全身を鏡に映してみた。
スレンダーな身体に小さめのバスト
まだピンク色の残る乳首に淡い繁み。
少女のような身体だ。
年齢の割りに発育しきれていないこの身体が優佳にコンプレックスを与えていた。


(こんなんじゃ彼氏なんてできないわ・・・)


友人や同僚は優佳のスタイルを羨ましがるのだが、優佳は自分の身体を嫌っていた。

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