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官能小説

2011年07月02日 10:11

一度失いかけた大切なものをもう一度手にしたとき、心は必要以上に用心深くなる。
その心は自分の制御できるすべてを駆使して大切なものをつなぎとめようと試みる。
すると身体に触れる相手の行動が直接心に触れられていると勘違いしてしまう。




「倫さん 今から逢おう。」
 
幸介からのメールに倫の大脳が混乱した。
(何もこんな時に、こんなに待たせてなによ!)
しかし、心と身体は行動を開始していた。
部屋に散らばった衣類をかき集め身につけると携帯電話をバッグに放り込む。
放出したばかりの男は肩で大きく息をしながら、そんな倫に言葉をかけた。


「今度いつ・・・」


倫は男を無視して荷物をかかえ部屋を飛び出した。
路地に飛び出すとき「カシャッ」とシャッター音が鳴ったのだが、そんな倫が気付くはずがなかった。
待ち合わせ場所も時間も書いてなかったが倫には確信があった。
ホテルを飛び出した倫はタクシーを拾いドライバーに行き先を告げる。
幸介と最初に出会った場所だ。
20分ほどの距離にある。


後部シートに座り、ようやく落ち着きを取り戻した倫はルームミラーの中の視線に気がついた。
倫は自分の様子を返りみる。
ワンピース胸元が大きく開き、胸の谷間が露になっている。
しかもブラジャーがなかった。
(いけない、ホテルに置いてきちゃった。)
倫はあわててブラウス胸元を閉じた。
その時、倫の鼻に男の臭いが届いてきた。
さっきの男が放った精もそのままにしてあったのだ。
今すぐティッシュでふき取りたいのだが、それをすると胸元を開かなければならない。
一瞬ためらったが、思い切ってティッシュを持った右手を胸元に差し込んだ。
考えすぎなのか、ルームミラーの視線は好奇の色に染まっているように見えた。
薄い生地のワンピースだから乳首の形は明白にわかってしまうし、第2ボタンまではずし、胸の谷間に手を差し込んでいるのだから無理もないと思う。
何度かティシュを取り替えようやくふき取ったのだが今度は汚れたティッシュの処分に頭を悩ませる。
はしかたなくバックに押し込んだ。
タクシーが待ち合わせ場所に到達し停止した。


料金を支払おうと手を伸ばすと、ドライバーが身を乗り出してきた。
胸の谷間を覗き込もうとしているのはあきらかだ。
倫の中にいたずら心が芽生えた。
空いた左手胸元を押し開いて見せた。
一瞬ドライバーの目が大きくなった。
豊に発育したバストだけでなく、きっと先端まで見えたに違いない。
タクシーを降りながら倫は考えた。
私、何をしているの?

どうして変わっちゃったのかな・・・と。



大きな街路樹の下にあるベンチに腰掛け、幸介を待った。
自分が変わってしまったのは幸介のせいに違いない。
倫は少しだけ腹立たしくなった倫は、このまま会わずに帰ってしまおうかと、できないことを考えてみたりする。
しばらくすると、前方から笑顔の幸介が近づいて来た。
倫は立ち上がった。
目の前まで来た幸介の笑顔を目にしたとき、先ほどまで持っていた倫のわだかまりがすっかり消えうせていた。


(逢えた・・・)


ジワっと涙がこぼれてくる。
倫の頭からつま先までゆっくりと見渡した幸介が言った。


「倫さん。何だか変わったね?」


(ばか。あなたのせいでしょ!)


倫は幸介をにらみ、聞いた。


「どうして?」


「だって・・・」



幸介が倫の胸を見つめていた。
倫はあわててノーブラバストを押さえながら考えた。


(どうしよう、どう説明すればいいのかしら・・・)


適当な答えが見つからず黙っていると、幸介が倫の右手を取って歩き出してくれた。
倫は、少し強引な行動が嬉しくて思わず幸介の左腕を抱きしめていた。


(あれ?妬いているのかな・・・)


考えてみたら幸介に言い訳など通用するはずがないのだ。


倫は、幸介の腕を強く胸に抱きしめた。
ノー・ブラのバストが容を変えている。
幸介のひじに乳首を擦られてむず痒い。

しばらく歩いた後、幸介はレストランに入った。
おいしいワインフランス料理で、2人はおしゃべりを楽しんだ。
幸介の選ぶワインはいつもおいしい。
ただし、自分の格好が周囲から浮いているようで、倫はまわりの視線が気になった。
しかし、幸介との楽しい会話とおいしい食事で不安は消えていった。
ひとしきり時間を過ごすと幸介が言った。


「帰ろうか 送るよ。」


(え!何て言ったの?だって、これから・・・)


当然のように、今日も身体を重ねられると思っていた。
でも、考えてみたら2人は付き合っているわけではなかったのだ。
ただ、サイトで知り合っただけなのだ。
3週間もそんなことを忘れていた。
もう恋人のように思っていた。
倫はうつむいて、必死に涙をこらえながら考えた。


(どうしよう。どうすれば・・・)


そして。

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