- 名前
- マーク
- 性別
- ♂
- 年齢
- 59歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- プロフィール見てくれて、ありがとう。 セカンドパートナーを探してます。 好奇心も性欲...
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未完の関係④―一度だけの重さ
2026年03月27日 02:46
第4回 一度だけの重さ
― 終わらせるはずの夜が、終わりを壊した ―
終わらせるための儀式は、静かに始まった。
ホテルの部屋の沈黙は、
深海の底のように重い。
三十年、
互いの人生のすべてを知り尽くしてきた二人が、
初めて「知らない場所」に手を伸ばす。
そこには、若者のような荒々しい情熱はどこにもない。
ただ――
今まで一線を越えないために記憶してきた
互いの癖を、
一箇所ずつ丁寧に答え合わせしていくような、
静かな執着だけがあった。
指先が由美の首筋に触れる。
かつて共有した冷たさよりも、
ずっと直接的に、洋一の理性を侵食していく。
夜が明ける頃、
二人は並んで横たわっていた。
儀式は完了したはずだった。
すべてを出し切り、
記憶の箱に封じ込めたはずだった。
けれど――
指先を離した瞬間、
身体の芯を襲ったのは、
経験したことのないほど激しい欠落感だった。
「……終わら、なかったね」
由美の掠れた声が、
朝の光に溶ける。
知らなければ、耐えられた。
彼女の肌の温度も、
呼吸のわずかな揺れも。
知ってしまったことが、
最大の誤算だった。
数日後。
何事もなかったかのように、
二人はまた「幼なじみ」として並んでいた。
完璧な微笑み。
完璧な距離感。
けれど――
握手を交わすその手のひらには、
消えない火傷のような熱が残っている。
一度きりの接触は、
救いではなかった。
二度と重なることのない日常を、
永遠に支配し続ける呪いだった。
壊れなかった関係は、美しい。
けれど――
一度だけ越えてしまったことで、
その美しさは、永遠の歪みへと変わった。
物理的には元の距離に戻り、
別々の道を歩む。
それでも――
二人の魂は、
「一度だけの重さ」に縫い付けられたまま、
手放すこともできずに、
終わることのない物語を抱えて、生きていく。




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