デジカフェはJavaScriptを使用しています。

JavaScriptを有効にすると、デジカフェをより快適にご利用できます。
ブラウザの設定でJavaScriptを有効にしてからご利用ください。

第14章:一ミリの熱

2026年03月03日 01:35

第14章:一ミリの熱

黒い水面は、二人の重い沈黙を映し出しながら、絶え間なく揺れていた。

ゆうがわずかに動くたび、押し出された湯が微かな圧力となって、みおの肌を愛撫するように包み込む。それは直接的な愛撫よりも生々しく、衣服も肩書きも剥ぎ取られた彼女の深部を揺さぶった。

もはや、どちらが動いて生まれた波紋なのかさえ分からない。
湯の中で、二人の境界線が熱に溶けて混じり合っていく。

吐息が届くほど、息が近い。

湿った空気の中で、ゆうの肺が空気を吸い込み、吐き出す気配が、みおの鎖骨のあたりをかすめる。それは逃げ場を失った呼吸の乱れのようでもあった。 見つめ合うことも、目を逸らすこともできず、ただお互いの存在の「揺れ」に神経を集中させる。

視界を塞げば、かえって水面下の気配が鮮明になった。

すぐ隣にあるはずの、ゆうの手。
かつて冷たい電波の向こうで震えていたその指先が、今は、伸ばせば届く熱となってそこにある。

触れたい。

けれど、触れてしまえば、もう二度と「ただの知人」という岸辺には戻れない。

だが、触れずにいれば、この夜の闇と自責の念に押し潰されてしまう。

触れたか触れてないか、その曖昧な距離。
波に煽られたみおの指先が、水中でわずかに流れた。

そして――。

指先が、触れた。

触れたのか、あるいはそう錯覚しただけなのか。

自分でも判別がつかないほど微かな、産毛が重なるような接触。

だがその瞬間、皮膚から脳へと突き抜けるような衝撃が走り、二人の間を隔てていた最後の薄膜が、静かに裂けた。

その一点から、堰を切ったように、互いの「体温」が移動を始める。

それは、これまで交わしたどんな言葉よりも饒舌に、互いの渇望を暴き出していた。

指先から伝わってくる、ゆうの微かな震え。
みおは、その震えを自分の指先で、静かに受け止めた。

湯面が大きく揺れ、静寂はもはや戻らなかった。

このウラログへのコメント

まだコメントがありません。最初のコメントを書いてみませんか?

コメントを書く

同じ趣味の友達を探そう♪

  • 新規会員登録(無料)

プロフィール

マーク

  • メールを送信する
<2026年03月>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31