打算-67/ザラザラした目

男がそう聞くと、女の目と表情が一瞬にして変わった
シャンペンを持つもう片方の手で、男の左腕を軽く掴む

「はい、是非お聞きして頂きたい事が有りまして」
「解りました。終わったあとで私の部屋にお越し下さい」
そう言うと男は部屋の番号を女に伝えた


この夜のパーティでの女のドレスは、みんなが見惚れてしまう程だった
濃い紫のそのグッチのカクテルドレスは、他の錚々たる女たちを凌駕している
中には女優も居ればタレントも居る
身体の線がまともに出てしまい、余程のスタイルで無いと着られもしない
殆どの部分が透けて見えるのだ

男は当然の様に欲しそうな粘っこい目
一方の女は嫉妬のザラザラした目で見詰める
見られている事に快感を覚え、女は堂々と振舞っていた


「どうだ、実物はいい女だろう？」
「そうですね」
「若いのも良いが、たまには熟れたのも良いぞ」
「それは解っています」
「俺も楽しむから、お前も朝まで楽しめ」
「そうさせて頂きます」

男にとって、この手の女にはうんざりだった
身体や顔なら幾らでも居るし、セックスが巧いのもそうだ
男が調べ上げた資料を見る限りでは、最も嫌なタイプに入る
あんな事が無ければ、近づきもしない
今回はこいつの趣味に合わせてやろう
それにこいつのものも見てみたい
・・・・・女房が惚れる男


一方の男は、こいつのセックスがどんななのか、それが知りたかった
結構いいものを持っており、巧いのは分かっている
かなり強い事も分かっており、俺並みなのだろうなと考えてはいた
・・・・・女房が手放さない男



「何をお飲みになりますか？」
「冷えたワインは有りまして？」
「今、用意します」

「あら、このワイン美味しい。ブランドを教えて下さいませんか？」
「ボルドーのグラーヴ」
「私ボルドーは余り好きではないのに」
「それでお話とは？」


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