夢を抱いて-72／潜望鏡

まあいいか・・・４年も前に佐藤先生にあげているのに、馬鹿なとうさん
上手く演技をしたわ・・・完全に騙されたみたい
１６歳の儀式でも上手く騙した
痛い痛いと言って、すぐに帰ったっけ

それからは月に２回は父に抱かれた
母が温泉旅行に行く春と秋は、それこそ朝まで離してくれなかった
高校の３年間は、ひなたにとって一番嫌な３年間だった



そして、あんな事もあった・・・・・
東京で勤め始めての夏、妹が一人で来ると電話が掛かって来た
東京駅のホームまで迎えに行き、そのまま銀座と渋谷を案内した
外で夕食を食べ、歩き疲れて二人が風呂にも入り、お休みとひなたが言ってもひよりは返事をしない

「どうかした？」
「お姉ちゃんに話があるの」
１６歳を目前にして、父から頼まれた話を始めた

「それでひよりはどう思うの？」
「知らない男より、おとうさんの方がいいかなーって」
私を手放してしまったから、今度は妹・・・・・
「ひよりがそう思うのなら、いいんじゃない？」
「いいかなー？」
「あの村では、みんなそうしてる」



「よーし、この春から行こう」
「だって受験勉強なんて」
「いや、推薦入学が何処でもある」
また電話１本で決める気だ、そうひなたは考えた


１月４日、ひなたは佐藤の正式な妻になり、翔太は次男になった
６月に生まれる女の子は次女になる

「あの時、望遠鏡の時、私が言った言葉を覚えている？」
「・・・・・私、先生のお嫁さんになる」
「言葉が抜けているわ・・・絶対、が」
そうだった、絶対と言った

「よく覚えているなー」
「貴方こそ・・・・・今夜は潜望鏡をして上げます」
「それは有り難い」


部屋で電話をしている佐藤がひなたに聞いて来た
「学部は何にする？」
「栄養士になる為の学部」

「そんな勉強をしたいのか？本を読むのが好きだから国文だと思ってた」
「貴方に長生きして貰う為」
はぁーなる程、いや有り難い


*****************************************
ブログの方にも来て下さい
http://kyoka2.blog18.fc2.com/blog-entry-1.html
*****************************************