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夢を抱いて-52/面白い話

2010年04月05日 01:43

夢を抱いて-52/面白い話

「一か月掛けて、ヨーロッパを二人で回って来る」
「ええ、そうしてあげて・・・私は待てるから」
「向こうからハガキを出す」
「うん、分かった」


ハガキは行く先々から届き、電話も3回掛かって来た
そして6月の終わりに来てくれた
女房が入院したんだ。もう長くは無い」
ポロポロと泪を流す佐藤を抱き締めてあげた
「明日帰りなさい。そして最後の日までは来ては駄目」
「分かった」


7月のうだる様な暑い日、佐藤が来てくれた
「昨日初七日も終わった。49日が済むまで来られない」
「ええ、そうして」
何もせず、その日の内に帰って行った

9月に入って直ぐに佐藤が来たが、心なしか明るくはなっていた
「何にもしてあげられなかった。私は何から何までして貰ったのに」
「いや、ひなたのお陰で、そんなに悲しくはならなかったんだ」
「そうだといいけど」


「それより、面白い話が有るんだけど聞きたい?」
「当たり前でしょう」
ヨーロッパ旅行中、週に2回は抱いたんだ」
「へーそう?」
女房の奴、驚いていた。だって何か月に1度抱くかどうかだったからなー」
奥さん、嬉しかったでしょうね」
「ああ、そう思う」


「これで不倫では無くなる」
「そうね。独身同士」
「話が有るんだ・・・・・」
「何よ、言いなさい」
結婚はしなくていいんだ。ここに来ては駄目かな?」
お嫁さんにしてくれるなら来ていい」
「えっ、本気なのか?」

「翔太には父親がいません」
結婚はしない方がいいと思うんだ。だって35歳も差がある」
貴方老後の世話は私がします」
「来月62になるんだ」
「歳は関係がありません」

ひなたが真剣な時は敬語になるのを佐藤は知っている
さっきからずっと敬語が続いていた
「分かった。一年様子を見てからにしよう。女房の喪が明けるまで」
そう言われては反対出来ない


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