夢を抱いて-54／芸術品

「尾瀬岩鞍でのあの時、私に痛くないと嘘を吐いて、何も知らない私を無理やり」
「分かった」
「いいえ、分かっていません。私はあの時、大人になるまでしてはいけないと貴方に言いました」
「その返事に何て答えました？」
「半分大人」
「全部子供じゃなかった？」
「そうだった」
「分かった様ね」

「分かった。分かった、もう言わないでくれ。協力する。させて貰います」
「解ればいいのです」
「お肉もっと召し上がれ。当分は口に出来ません」
「魚は？」
「ご心配なく。魚は作ります。但し一週間に一度」
あぁー、参った


「日本酒はもういいですか？今日限りですよ。明日からはワインにして頂きます」
「それは無いだろう？」
「いいえ、みなさんお酒で失敗されるのです」
あぁーなんて事だ
「お肉を食べたい？」
「ああ」
「お酒も？」
「勿論」

うん？少しはいい？
「一日も早く妊娠させる事です。そうすれば翌日から解除して上げます」
「・・・そうだな」
「貴方のは濃いから直ぐです」
「分かったよ」

「これは貴方が教えてくれた事」
「分かっているさ。よく高校の時に聞いた事を覚えているな？」
「私の頭の中の殆どは、貴方が教えてくれたことよ」
食べ物も、飲み物も、経済に政治、国際関係も恋愛も、勿論セックスもみんな佐藤が教えたのだ
「私はいい人間？」
「ああ」
「私はいい女？」
「最高だな。芸術品さ」
「造ってくれたのは、貴方・・・・・有り難う」


「友達も無く、両親には疎んぜられ、本来なら悪くなってた。それを正しい道に導いてくれたのは貴方なのよ。分かっているの？」
「私はずっとお前に悪いと思っていたんだ。負い目があったんだ」
「私は一度だって貴方を恨んだ事も憎んだ事もない。ずっと愛してた」
「有り難う」

「だったら、早くしてよ。濡れたままなんだから」


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