シェア-26／頼みごと

「お願いが有るんだ」

半年前、唐突に大貴が咲希に話し出した
「どんな事？」
「大翔の筆おろしをしてやって欲しい」
「えっ？そんな事・・・・・絶対に嫌」
「男も女と一緒で最初の人は忘れない」
「上手く行くか、行かないかは一生に係わるんだ」
「・・・えぇ」
「咲希だったら、いい思い出が一生続く」
「・・・・・でも」
「解ってる。酷い事を言っているのは」
「それが分かっていて・・・？」


「貴方は幾つだった？」
「中学の１年か２年だった。どちらだったかは覚えて無いんだ」
「しかし、相手の人の事は今でも覚えている。咲希だって覚えているだろう？」
「えぇ、覚えている」
「それだけ大事な事なんだ」
「それは分かるわよ。でも、血が繋がって無くても、本当の子と思ってる」
「それも分かっている」
「俺に惚れてくれているのも分かる。俺の時も、親父が計らってくれた」
「ずっと後で知った事だけれどね」
「貴方の場合は環境が良かったもの」
「あぁ、置屋とあげ屋をしていたからな」


「良く考えて・・・一度だけでは済まない」
「そうだな。俺の時もかなり続いた。好きになってしまったし、良過ぎた」
「そうでしょう？」
「毎日だったなー」
「そうなるわよ、それでもいいの？」
「俺はお前を愛しているし、本気で惚れているんだ」
「それは嬉しいわよ、だから」
「だからこそ、なんだ」
「俺が惚れた女だから・・・こそ、なんだ」


「貴方の事は分かっていた積りだったのに」
「いや、分かっているさ。誰より、俺自身より」
「男って、みんなそうなの？」
「分からない。でも、俺は・・・」
「俺は？」
「変わっているのかも知れない」


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