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夏の嵐

2009年04月17日 00:10

夏の嵐を久しぶりに見た。16日のNHKBS2。大好きビスコンティ作品。
子供の頃、学校から帰ってよく見た午後の洋画劇場。その時代のテレビは自前の制作能力はまだ貧弱で、輸入のソフトにかなり頼っていた。で、夕方とかは少し時代の落ちた洋画を繰り返し放送していた。多くは戦前戦後間もない時代のものとか。なかでもイタリアリアリズムと言われた映画群はお気に入りのひとつ。子供ながらに、心にしみいるような作品が多かった。例えば、自転車泥棒とか。リアリズムと言いつつ、熱く感傷、情緒的。戦争をはさんだ苦難の物語は、打ち棄てられた現実を描写するだけではない。哀愁をまとい、苦しみをエロス昇華させる。あたかもはりつけられたイエスエクスタシーの表情が浮かぶごとく。黒髪で彫りが深く、肌は浅黒い俳優達。官能的な早口のイタリア語。特に女優。その独特の濃く情熱的な面差し。古代彫刻のような豊満肉体。子供心にも強くかきたてられた。
ビスコンティの作品はその延長線上にありながら、貴族の世界などを好んで描く。滅びいくものの高い精神性。耽美的で絢爛たる無償のエロスの世界…
年若く美貌の伯爵夫人。夫は地位と財力のみの俗物。占領されたベネチア。解放と自立の大義に準ずる彼女の従兄弟に対し、彼女は隠れた同士でもある。従兄弟は逮捕され、仇でもあるオーストリア占領軍の若き中尉の存在。夫人と中尉。満たし切れない情熱を抱える夫人と美しく魅力的な若き中尉。二人の触れ合いは、必然的に二人の間の情熱を生む。
結婚と貞淑、抵抗と独立。或いは、国家と献身軍規と忠誠。または、占領軍と民衆。はだかるモラル、障壁。それらは、男と女情熱を、遮ることでさらに高めていく。様々なモラルの制約と対立する二人の愛。しかし、その愛独自のモラル。全てを裏切り、愛に献身する。そして、愛のモラルとそれに対立するモラルとの相克。さいなまれる恋人達。裏切りは生まれ、復讐が応じる。突然の破局。限りなく美しく残酷で、儚い…かけがえのない愛、愛憎、男と女…主演アリダ・バリ。黒髪、彫りが深く、浅黒い肌。情熱的で哀しげな眼差し。言い回し。まさしくイタリア女優。惚れ直しました…

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