冬の彼方へーーー弥生の空2

美紅はメモとペンを持って安井の待つ応接室へと向かった。
部屋には既に安井がノートPCを開いて待っていた。
さっそく美紅は安井から今日の訪問主旨を聞く。
説明はこうだ。

クライアントは小さな会社だが昨今のネットの時代に応じたIRを検討している。
そこに美紅達の会社が営業をかけ、広告代理店でなく、
印刷業母体だがWEBコンテンツ分野も業績を伸ばしているウチに興味を持ってくれている。
プレゼンも大切だが、会社のイメージを理解してもらう為、
営業の安井と、美紅という会社や業務をよく知りそれを伝えることのできる、
女性ならではの物腰の柔らかさと華やかさで、自社と業務内容をよりアピールしたい。

そう説明を終えると安井はPCで簡単に自社PRと、
クライアントに対するちょっとした提案内容を美紅に見せた。
リハとしてはこれで十分と思われた。
後は訪問の際の挨拶としての印象が肝心である。
訪問は14時のアポとなっている為、昼食を済ませてから車で出発するだけだ。

二人は30分程打ち合わせると、少し雑談してそれぞれ昼食をとることにした。
相変わらず安井は無駄が無いな、と美紅は思う。
安井もまた、営業として切れ者だという評価がもっぱらだ。
美紅としては同行して愛想を振りまけば良いのだから気は楽であった。

昼が終わり二人は会社を出発した。
冬空が一掃され空には青空が広がっていた。
季節は弥生、ほのかに春の気配が感じられる日であった。