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冬の彼方へーーー芽生え8

2015年03月31日 22:23

達也は美紅の妊娠の報告を喜んだ。
つい少し前はセックスレスだった二人に晴れて新しい家族が増えることになるとは、
互いに想像することもなかったが、やはり現実のものとなると戸惑いと喜びが入り混じる。
だが困る事は何もないのだ。
ただ新しい生命が芽生え始めた…それ以外に雑念を持つ必要が無くなったのだから。

美紅のその週一週間はまるで何事も無かったように仕事にあたった。
迷いは何も無い。生命を授かった事と仕事はまた別であった。
相変わらず美紅は見事にクールな仕事ぶりであったし、
つわりなどは無いに等しく体調も安定していたのが幸いだ。

そして週末、久しぶりに美紅は残業することになった。
月末とクライアントの納期が重なりチームも慌ただしく動いていたためだ。
その為チームは全員が残り仕事を詰めていた。
だがさすがに22時近くになり、課長成田が声をかけた。
「このまま遅くまで続けても皆疲れるだろう?
集中力も欠けてくれば効率も悪くなる。
今日はそろそろ終わりにしようか?
あと重要な詰めは、出て来られるものは明日休日出勤でも構わないよ。
俺は出勤するから。
女性陣はその必要は無いが、男だからって強制じゃないから後は裁量に任せるよ。
いいかな?じゃあ、終わるとしようか」

美紅も他の者も正直その言葉を待っていたようなものだ。
成田の言葉に従った。
そして帰り支度をすると、何人かは田村と何時もの店で軽く一杯やって行くと言う。

美紅は帰宅組だ。何しろ時間が遅い為、お腹は空いていたがあまり無理をしたくなかった。
もう一人、同じく帰宅を選んだ者がいる。神崎だった。
神崎は前日も遅かったようで、付き合いより翌日の仕事を選んだのだった。
後の者は田村に合流ということになった。

神崎は実家に帰ると言う。
必然的に電車の方向が美紅と同じということになり、
美紅と神崎は皆と別れ、駅まで連れ立って歩いて行った。

「美紅さん、久しぶりに二人だよね…」
神崎が言う。
実際、ここ何週間は神崎と関係を持っていなかったのだった…。
「そうだね…神崎君忙しそうだったしね。
疲れてるんじゃない?いつも遅いみたいだったし」
「そうだな…さすがに今日はもう疲れたね。
美紅さんはどう?
週の初め頃はちょっと疲れた顔に見えたけど」神崎が聞く。
「う~ん…先週の疲れが残ってたかな…
でも今はいつも通りだよ。あ、電車…」

駅の改札に着くとちょうど電車がホームに到着するのが見え、
美紅と神崎は急いで改札を通り抜けた。
ギリギリで二人は電車に間に合った。
が、乗り込んだ電車が発車と共にガクンと揺れた瞬間、美紅は少しよろめいたと同時に
軽い目眩を感じ、とっさに神崎にしがみついてしまった。

このウラログへのコメント

  • けろ 2015年04月03日 17:25

    まさかこの期におよんで、やんのか~い!それとも、せえへんのか~い!(・ω・;)

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