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【魔法少女っ】63-3、走る居場所(せかい)。

2012年03月05日 20:00

「ほだな、当たり前だず」
無関心ぽくレイチェルは言った。彼女なりの祝辞である。
声に出してない部分も言えば、
「おらはおめがやるとしんじでだず」
である。レイチェル麻衣子の芯の強さのようなものを見抜き、それがあれば高校受験くらいクリアできると信じていた。
この前落ちる前提の話をしていたのは、時期的に「人事を尽くした」状況だったからだ。
「ありがとう!」


神社
お礼参りとは殊勝ですね、先輩」
相変わらず箒の似合う巫女さんな葉子だった。
「そんな大層なもんじゃないのよ」
確かに大層なものではない。ただ報告に来たようなものだ。
「ま、ウチとしては定期的に来てくれるお客さんが有り難いわけですが」
賽銭なんて落とさなくていい。とにかく来てくれて頭を下げて欲しい。そうすれば忘れられなくて済む。
神社神様なんてそんなもんだ。
「だそうだ、少年」
葉子はネロを呼び、頭を撫でる。
ネロは「やはりか」という想いにとらわれた。
「おめでとう、麻衣子
「ありがとう、ネロ
麻衣子ネロがあまり嬉しそうじゃないのに気付く
ネロ本人からすれば嬉しいとか残念とかの問答ではなく、「恐れていたものが現実になった」「それが来たら来たでそうなんでもない」といった感じだった。
彼が麻衣子に抱いていた仄かな想いはどこへやら。うーん説明が難しい!
「応援するよ、麻衣子麻衣子の夢が願いが実を結ぶように!」
「そこまで大袈裟に言われると照れるのよ」
ネロの激励に、麻衣子は頬を染めた。
ネロも頑張るのよ。ネロの夢や願いが叶うように。まだ小学生だから、見つけるのが先だろうけど」
「う、うん」
「じゃあ、ありがとね」


見送るネロ
大丈夫か、少年」
背中を支えるようにネロの後方に立ち、葉子は言った。この問いは愚問である。
ネロ失恋したようなものなのだ。このダメージはなかなか立ち直れない大きさであるとも知っている。

「…麻衣子はこの街を出るんだ」
「でも、街を捨てるという意味ではないぞ、少年」
わかっている。しかしわからない。
理屈はわかるけど納得はいかないという感じか。


整理のつかないまま、ネロは自分の家に帰った。
家とはもちろん、ネオバビルの塔のドーナツ部分である。

「起きろ、スターリン
スターリンの自室に通信魔法繋ぎ、ふて寝してるスターリンを起こすネロ
皇帝陛下が直接に!かたじけのうございます」
スターリンは以前の馬鹿るでぃの出撃の際の攻撃を受けて落ち込んでいたのだ。
「お前の取り柄はスペックだけでなく、司令官としての器にあると余は認識している。最終作戦の手筈を整えるんだ」
「はっ!しかし最終作戦とは?この世界進行やめちゃうんですか?」
「意味の解釈はお前の勝手だ。この最終作戦で、余は香住町を頂く!それがミッションの目的だ」
「よくわかんないけどやってみる状態ですが、はっ!このスターリン、必ずや」
「その社交辞令も飽きた。とにかく軍の総動員で頑張ってくれ」

「ははっ!」


ネロはもう疲れたと思っていた。

続く

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