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官能小説2:「声」

2010年10月19日 23:59

こんなのは如何ですか?
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  ●声に性を感じたんだ…
  
初めて会ったのはアルバイトの面接だった。
「ええと、椎名美月(しいなみつき)さん。さっそくですが椎名さんの業務内容はデータ整理ですがパソコンは使えまか?」

  最初名前を呼ばれたときドキリとした。
  この人、とても声がきれいだ。
ぱっと見て顔もとてもきれいだと思ったけど、やっぱり声がとてもきれい。

  「…さん、椎名さん?」
  「は、はい?!」
  「ふふ、面接で緊張していますか?」
書類を見ながら少しこの人はふわりと笑っていた。あ、違う。
  この人、笑った顔がすごくきれい。
  そういえば名前を聞いていないことを思い出す。

  「え、ええ、まあ…えっと」
私が口ごもるとこの人はああ、と言いながら書類を置いて私に振り返る。

  「間口清二(まぐちせいじ)です。私は総務関連の特に人事関係をしていて、デリケートなデータを扱います。ただ、支社が多いからデータが膨大な上に毎日変わっていきます。椎名さんにはそのデータ整理をしていただきます。明日から大丈夫ですか?」

間口さんは整理した書類を机の上でトントンと鳴らし、私を見た。
  まだ私はこの人に見とれている。
  ううん、見とれているのではない。声が耳に残る…
  「はい。よろしくお願いします」
  私は軽く礼をした。

  仕事は思ったよりも忙しかった。
  内容がデリケートなものの扱いなだけあって
  この部署にいる人数が私を入れて4人ととても少ない。

  他からの応援も入れられないし、
  この部署は関係者以外出入りを禁止されている。

  間口さんは私の教育係となり、丁寧に教えてくれた。
  私もパソコンは得意としていたからすぐに覚えられた。
  間口さんの教え方はとてもわかりやすく、優しい。
  その教えるときの声がとても心地よかった。

そんな私はいつものように覚えたてのデータ整理をしていた。
いつもは人がいるのに、今日に限って2人とも休んでしまった。ただでさえ少ないところなんだから体調管理してほしい、
なんてことを間口さんは残念そうな顔で言っていた。

  でも怒ってはいなかったから優しいな。なんて思っていたけど仕事量は想像以上にあり、今日終われるかさえ問題だ。

  そんなに集中しているから、私はそばまでいたことに全く気づかなかった。今だって気づいていない。

  「椎名さん」

  耳元でふわりと声が聞こえ、私はガタガタンと机と椅子を鳴らし、
  思い切り立ち上がってしまった。

  なに、これ。顔が、耳が、体が、熱い…

  間口さんは少し驚いた表情を見せていた。
「すみません、そんなにびっくりされると思わなかったので」
  「あ、あー、いえ。何でしょうか」
  困ったような顔をしていたけどまたふわりと笑い出す。
「いえ、あまりにも集中していたから邪魔してはいけないと思いつつつい声をかけました。今日は突然2人とも休んでしまって仕事量があると思いますが」

  「え、いや…大丈夫ですよ、これくらい」
  「そうですか。ですがよかったら少々休まれませんか?
  休憩時間もすっかり過ぎてしまっていますよ」

  間口さんがそんなこと言うから腕時計を見た。確かにもう2時になろうとしている。「う、わー。時間ぜんぜんわからなかったです。ありがとうございます」
  「はい、いってらっしゃい」

  私はその足でトイレに入った。
  さっきは本当にびっくりした。
  声をかけられた耳に吐息がまだ残っている気がする。
  そしてほんのり感じる秘部の湿り…

  感じたんだ。

  間口さんの声に性を感じたんだ。

  どうしよう。
  間口さんをたまらなく好きだ。
私は彼とキスすることを想像した。抱きしめてもらうことを想像した。
  セックスしていることを想像した。
  耳元で名前をささやかれていることを想像した…

  結局私はぜんぜん休めなかった。
  想像、いや、妄想?そんなので顔を赤くして、
  秘部を湿らせ、どこに行けるわけもなく。
  しょうがないと思いながらデスクに戻った。

  「あれ、椎名さん。休憩はどうされました?」
  「あ、すみません。何だかさっぱりしちゃって」

  私はそう言ったが間口さんが何だか信じてくれてない顔をしている。
  「そのわりに顔が赤いですよ。もしかして椎名さんも…。大丈夫ですか?」
  間口さんはそういって私の頬に手を当てた。

  ビリッ。

  私の体に、いわゆる電気が走り、
  私はその場に座り込んでしまった。

  なにこれ。すごくきもちいい!!
  もちろんそんな私にびっくりして間口さんは慌ててしゃがんだ。
  「だ、大丈夫ですか?!」
 間口さんが私の両肩を優しくつかんで抱き上げようとする。
  その触れたときにまた電気が走った。

  「あっ…」

  え、と間口さんの声が聞こえた。私もあれ、と思った。
  私、今どんな声だした?
 思わず間口さんの顔を覗き込む。間口さんの顔は真っ赤だ。

  「あ、いやいや、あの、忘れて、下さいっ」
抱きかかえた腕を離そうとしたが間口さんはそれを離さない。
  そのまま胸元に抱き寄せられた。

  嫌味のない、少量のオーデーコロンが香るその奥で、
  心臓の音がトクトクと聞こえた。

  多分、普通より早いのだと思う。
  「あの、まぐ…」

  如何でしたでしょうか。こういう経験をした事のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

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