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官能エッセー(その7)坂道を登る蝶

2010年10月17日 09:37

こういうのは如何?昨日は確認ボタンを押した筈なのに登録されていなかった。残念

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  ●大人の女になって久しい私
  
坂道を上ったという記憶がある。
  そのとき私は十九で、恋人は十八だった。

  八月の渋谷
  松涛美術館近くのカフェで遅い昼食をとった。

  それから何分か歩いて、適当ラブホテルへ入った――。

  「きっとそれは円山町だね。つまり、ここだ」
  今の恋人は、私の昔話を聞くのが好きだという。

  ベッドサイドにあった軽食のメニューを
 気のない素振りでめくりながら、私に話の先をうながした。

  「それで?」
  ――いちばん安い部屋を、私たちは選んだ。

  そこで十八歳の男は初めてだと白状した。
  するのも、こういうところへ来るのも、何もかも。

  「彼は、出来た?」
――とても苦労して時間がかかったけれど、ちゃんと出来た。

  快感よりも、したという事実そのものに
  恋人は感動しているように見えた。

  「君は?」
  ――私は、この人とはもう終わりだと思った。
  あれをしないほうが美しい恋だった。


  「俺とは、どう?
  そういえば、君からラブホテルへ入りたがったのは初めてだね」

  ラブホテルは嫌いだった。
  最初が悪かった。

  でも、この人となら良いかもしれない。
  なんとなくそう思って、今日、初めて、恋人を誘って来てみたのだ。

  それで、再び坂道を上った。
  十数年ぶりに。夏のさなかではなく冬の終わりに。

 大人の女になって久しい私は、コンドームを持参していた。

 恋人に見せると、彼はパッケージの可愛らしさに感じ入り、
  「使うのが惜しいなぁ」と馬鹿なことをいった。

  「温かいんだって。きもちよさそうでしょう?」

  「じゃあ、試してみないといけないね。
  ……君は使ったことあるの?」

  まさか、と、私は真剣に頭を振った。

  愚かしいことかもしれないが、さっきから、
  処女に戻ったような気が少ししている。

  初めてこういう場所を訪れたような気さえする。

  ――来る途中の坂道で蝶を見つけた。
まだ春は先なのに、気の早い一羽が私たちの前を飛んでいた。

  ただそれだけのことで、私の気分は華やいでいる。

  人生に春は何べんでも巡ってくる。
  新しいコンドームを取り出す恋人の指先を見つめながら、
  乙女の心がひらひらとはばたいている。

 如何でしょうか?

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