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打算-5/戸惑い

2010年06月27日 01:14

打算-5/戸惑い

主人の上司である大野に連れられ、息子の目指す大学の学部長に紹介された奈々子
受ける前からもう合格すると言われた

そんなものなのだろうか?
コネが強ければ誰でも合格するとは聞いた事が有る
でも本当なのだろうか?

大野には怪訝な顔の奈々子に見えたのだろう
「試験さえ受ければ合格します」
「本当ですか?」
「はい・・・但し、入ってからあそこは遊べませんよ」
「それはもう」
「あの大学は外国並みで、進級も卒業も頑張らないと出来ませんから」
「はい、させます」

タクシーの中で大野が右手を出したので、奈々子握手をした
その大きな手に包まれた私の手を、長い間離さない
ふっと気がつくと、両手で私の手を摩っている
目を見詰めながら話す大野に、男を感じている自分に気付き戸惑った


最寄りの駅に着くと、大野はここで失礼すると言う
これから取引先との打ち合わせが有るのだそうだ
「何かお礼をしないと」
帰りの電車の中で、奈々子はそればかりを考えていた
「・・・主人に相談しよう」

その週末に夫から電話が架かって来た時、何故か奈々子はその話をしなかった
電話を切ってからも、話さなかったのかが引っ掛る
内緒にする話ではないのに・・・何故しなかった?」



それから10日ほど経った夕方、大野からまた電話が架かって来た
「明日お昼のご予定は?」
「いえ、何も」
「だったら、お昼をご一緒して頂けませんか?」
「はい、喜んで」
その日は息子の試験の二日後だった


奈々子はどうして嬉しいのか、心が騒ぐのか分からなかった
どこから見ても、主人の方がスタイルも良く格好がいい
でっぷりと太る大野に格好よさは微塵も無い

また、楽しいお喋りが出来る
そうよ、話が面白いから
「主人以外の男と、二人で話す機会が無かったからよ」
しかし主人には無い、女を持ち上げる優しさがあった
レディーファーストの言葉そのままに


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