母-3

　女が男に初めて出会ったのは子供の学校
　駅まで歩いていると、学校の駐車場から出て来た車の
　ドアが開く

「乗らない？駅まで送ってあげるよ」
「はい、有り難う御座います、でも」
「さあ・・・家は何処・・・町名は？」
「桜台」
「駅からバス？」
「はい」
「行って上げる」
「そんな、悪いですから」
「どうせ暇」
「だって」
「いいから・・・名前？」
「木戸瑞希」
「みずきさんか・・・私は紫野京介」
「きょうすけさんか」
「面白い・・・気に入った」

　　　笑っている・・・結構いい男

「ご主人は忙しくて来られない？」
「いえ・・・居ません」
「ご免・・・悪い事を聞いてしまったなー」
「いいえ、平気です」
「そんな事は無いよ」
「いえ、もう長いですから」
「話題を変えよう・・・お昼は？」
「はい？」
「一緒に食べない・・・家に帰っても誰も居ないんだ」
「いいですが・・・でも」
「何が食べたい？」
「何でも」
「それじゃ、お好み焼きで良い？」
「ええ」

　　　お好み焼きだって、変なの・・・食べるの何年ぶり？
　　　車に乗せられ、お昼を誘われ、付いて来ている
　　　何で？・・・男二人で車に乗るのは６年振り
・・・二人で食べるのも６年振り

「コテの使い方がお上手ですね」
「関西の出身なんです、だから」
「へーそうなんですか・・・全然アクセント、
分かりませんでした」
「もうこっちに来て、１５年になります」
「へー、そうなんですか」
「生まれはここ？」
「ええ、ずっと」
「そうなんだ・・・田舎が無いのか・・・さあどうぞ、
焼けました」
「火を消しますね」
「ここのは、まあまあいけます・・・オーナーが大阪人なので」
「へー、そうなんですか」

　　　また、わらっている


　　　　　　　・・・つづく