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俺の24時間16

2008年03月20日 09:31

レオノーラが再び意識を取り戻した。俺たち三人は彼女を囲むようにすわり、アミが話を始めた。
「・・・・そう、貴方はB国の農家に生まれたのね、寒い・・・ご両親から虐待を受け、売られたのね、・・・そこで売春強要され・・」

アミには他心通、つまり、人の心を読む能力があった。レオノーラの出生から生育がアミの脳裏にイメージとして現れる。
「政府の機関が買ったのね。身体能力の高かった貴方は訓練され、諜報員として育てられた。貴方の友人・・・チョムハが・・あなたが愛する人だったのね。貴方にとってはじめての彼だった。・・・・彼はこの国に入り込んだ。捕らえられた。その後あなたは送り込まれた。
あなたは諜報活動を続けながら、彼を救おうとしたのね。でもできずに、彼は原因不明の死を遂げた。あなたは彼がこの国の政府に殺されたと思っているのね。」

レオノーラが大きく目を見張った。
アミは冷静に話しながら目に涙を浮かべた。レオノーラの感情に共感している。俺は、アミの後ろの周り彼女の背中にそっと両掌を当てた。彼女が感情に流されないよう気を送った。
「チョムハは・・・生きているわ。」アミがつぶやいた。
「なに?」俺は驚いた。彼女は遠隔透視もできるのか。
アミは再び両手を合わせて、チョムハの居所を透視した。
「おそらく独房。どこかの刑務所・・そこまでしかわからない。」
レオノーラが動揺を見せた。「嘘だ。」そう言っているようだった。

「いえ、嘘ではないわ。」アミが答えた。
「よし調べよう。」俺はJCIAの連絡してチョムハのアメリカにおける処遇を調べさせた。5分ほどして。ニューヨーク郊外にある***刑務所に閉じ込めていることがわかった。だがどうするか。取引をして彼を出す代わりにテロリストのほかの人間の居所をはかせるか、辞めさせるか・・。

「以下確認したがチョムハは****刑務所にいる。確かに生きている。だが簡単に彼を出すことはできない。取引をしても彼を出せるかどうか。」
レオノーラはまだ信じていないようだった。
「チョムハは身長170センチ。体格は筋肉質。一緒に訓練したこともあったのね。彼が貴方にあげた・・指輪・・・そう。貴方・・チョムハの子供を生んだのね?」
レオノーラ目が何か言おうとしていた。舌を噛み切らずに話せるように口のさるぐつわをはずしタオルをかませた。
「いないわ。こどもなんて」
「子供は3歳。C国にいるのね同僚にかくまってもらっているのね。場所は・・・」
「わ、わかったわもう言わないで・・」
レオノーラが折れた。チョムハが生きている可能性があること、子供の所在が明らかになったこと。この二つはレオノーラの心の支えでもあった。アミは彼女の目ではなく、眉間を見つめながら話した。
貴方が、この国や、この国に協力した日本を怨むようになった背景は理解できるわ。でも同情ばかりをしているわけにはいかないの。私たちにも人のつながりがあり、家族があるの。だからそれを守りたいの。貴方が子供を守ろうとすることと同じに。」
レオノーラは黙って聞いていた。
「いま貴方が見たこの能力は、貴方の国の科学でもこの国の科学でも解明できないはずよ。この国の学者たちの思想にも欠陥はあるけれどもあなたの国のB思想にも欠陥があるのよ。」
トリックではないか・・レオノーラは一瞬思った。
トリックではないわ。」
アミはすかさず答えた。
「古い文献を探せばいくらでもこういう話は出てくるわ。近代現代の科学や思想はこういうことをすべて封印してしまったのよ。」

「組織をあきらかにすればこの国は私たちの同胞を殺すわ。だから死んでも明かせないわ。」レオノーラの口から初めて本音がでた。
それは事実だった。この国が、あるはわが国が知ってもこの国に知らせ、諜報員を皆殺しにするだろう。だがそれがまた怨恨を産むということに気づいていないのだ、この自称文明国の連中は・・

「あなた方が幸せに暮らせる方法はあるわ。でもそれはあなた方が復讐しないという条件が必要よ。」
「同胞の中にはこの国に家族を殺された者もいる。簡単にはいかない。」

貴方が知らないことがあるわ。」アミがゆっくりと話した。「貴方が信じるかどうかはしらないけれど。」
「敵は国家ではないのよ。」
 レオノーラが不思議な顔をした。
「この国の大統領を動かしているのは、ある秘密の組織なのよ。それは貴方の国をも作ったのよ。」
 レオノーラは理解できないかのような顔をしていた。
「これをみて。この国のこのマークは、秘密結社符号よ。札にも印刷されているわ。」
「なぜ同じ結社が対立する二つの国をつくり動かすのか?」
「それが戦略なのよ。あらゆるものを二つの陣営に分類し、対立させることで、どちら側かの立場に立たせ、本質を、本当の道を覆い隠してしまうのよ。敵か、味方か・・覚えている?この国の大統領貴方の国を攻撃したときに発した言葉を。日本もこの国につかざるを得なかったのよ。この二分法と利益がからんでね。だから、貴方の敵は、この国よりも貴方の背後にいるのよ。」
 俺たちにはさまざまな情報がある。この結社についての本もたくさん出版されている。そのため逆に信憑性がないと言われている。だがレオノーラの国にはこのような結社の情報がなく、またあまり目にも留めなかった。B国とアメリカの対立だけが彼女の頭を支配していた。
 アミはこの構図を変えようとした。これカウンセリングテクニック的に言えばリフレーミングつまり見方の「枠組み」を変えるのだ。



kimutaku_41 やふー

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