- 名前
- ヴォーゲル
- 性別
- ♂
- 年齢
- 74歳
- 住所
- 海外
- 自己紹介
- もう海外在住29年、定年もそろそろ始まり、人生のソフト・ランディング、心に浮かぶこと...
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咽喉くらべ
2007年04月04日 10:43
このところこういうのがいいよ、と教えてくれた女性ヴォーカルが二つあって聴いている。
どちらかというと天邪鬼な私には圧倒的に数では多数を占める女性ヴォーカルより男性ヴォーカルを聴きたいと思っているのだが、異性に惹かれる男の気持ちから勧められたCDをウオークマンに入れてあちらこちらへの行き帰りに自転車を漕ぎながら聴いている。
1)Roberta Gambarini / Easy To Love BMCD 499
2)Robin McKelle / Introducing Robin McKelle O+ Music PO124 HM 87
妙齢の本格的ジャズヴォーカルの咽喉だ。
どちらも初めの出だしの1分で、あ、これは、、、、、、と思い当たるものがあった。 両者ともオーソドックスな歌唱法である。 声に張りもつやもあり、よく訓練されていてマイクなしでもすれっからしで辛らつな聞き手をも引き込む力がある。
それに、知人と今のヴォーカルにはなぜあまり惹かれるものが少ないのか、という話になり、エラ、サラ、カーメン、ニーナなどあまたいたジャズ女性ヴォーカルにあって今はないものは何か、逆に当時にはなかったもので今あるものは、ということにも話が及んだ。 当時なくて今あるものは魅力的なくびれた腰と細い咽喉である。それに当時なくて今あるものは電子音響技術と豊富な映像資料である、うんぬん。 いささかシニカルであり老化現象のすすんだいやらしい目であるがこれがかなりの確信をついているのではないかと二人で合意した。
耳より目、重量級より軽量級ということになるのだろう。 70年代の前半にエラのコンサートに出かけたことがある。 声に張りはまだ残っていたもののビブラートが年齢を隠せはせず、それに加えて天井桟敷から覗き込んだサラと禿頭の伴奏ピアノ、フラナガンを見下ろすと関取とタニマチという風情であった。 今このような風情の女性ヴォーカルが生息できるような余地がまだ残っているのだろうか。 もし残っているとしてそのような新進のプロモーションヴィデオを見てみたい気がする。
1)を聴いてすぐ頭に浮かんだことがある。 私はジャズヴォーカルを聴きだしたのは70年代初期でその頃はカーメンマクレーは得意ではなかった。 確かに堂々としていて当時発売されたアメリカン・ソングブックなどはよく聴いたが時にはその脂の乗り方がまだ聞き始めの若輩には荷が重すぎた。 けれど後年、彼女の50年代後半の録音を聞いたときにはなぜここから聴き始めなかったのかと後悔した。 その来るべき将来に向けての溌剌とした瑞々しい咽喉が第一印象として浮かんだのだ。 いつだったかダイアン・クラルのカナダ放送局製作インタービューを30分ほどYouTubeかDivxかで見た。 その中で彼女がいかにベースのジョン・クレートンに師事して公私ともに世話になったか今名声を手にしたヴォーカリストが彼に負うところが多いことを力説していたのを思い出したのだが、1)ではこのベースがガンバリーニの張りのある咽喉を引き立てるのに大きく貢献していることに思いが至った。 中音部とそこから伸びる高音部はこれからさらに磨きがかかるに違いない。裏返る音色の上昇と伸縮力、音程の制御が聴き所だろう。それを引き立てる録音のエコーの具合が貢献しているのだが伸び伸びとした彼女の歌唱をライブで味わいたい。
2)の第一印象は紗のかかった咽喉に伸び、張りがあるものを懐かしいビッグバンドのバックで歌う若き日のクリス・コナーを久しぶりに思い出し心地よい好みの咽喉に出会ったという思いがしたことだ。 それに加えてエラのベルリンライブで頭にマックザナイフとともに擦り込まれたBij Mir Bist Du Schonをラテン調にして趣を加えたところに伝統的にまとめたこのアルバムに自己の標を刻印したものと見た、いや、聴いた。 全体的に懐かしいスタンダードでまとめているところにこれから徐々に自分の物を示していくという自信が表れているようだ。 数週間前この人のライブを聞き逃したことが惜しまれる。 数メートル前で聴いてみたいという欲がでたのだがそれも来年以降まで待たねばならないのだろうか。
面白いのは両者ともにレパートリーにOn The Sunny Side Of The Streetを配していることだ。 料理の仕方に両者の持ち味を示している。 聞き比べてみると面白いだろう。紗のかかったしっとりした下腹に応えるものか明晰な広がりのある撥音の魅力か、満腹することのないこれらの食べ比べも結局、つまるところ咽喉が勝負ということになる。
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