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碧い瞳のアンティークドール 17話

2009年02月20日 08:16

【最後のご主人様
長い刻を経て

貴女のもとへ…‥


もう…疲れちゃったの

いろんな人生を見すぎてしまったせいね
楽しい人生もあれば悲しい人生もあったわ

忘れたくても忘れられない

私の碧い瞳にしっかりと焼き付いていたから

だけど…‥
私は歳をとらない人形

人間はどんどん年老いて、私を残して死んでいく

ねぇ…‥
貴方の人生は悔いのない人生だった?

そして私は今、高値がつくアンティークドールとして、馬車が鉄の塊になった世界で微笑みながら外を見つめていた

私のようなドレスを着る人達はいない

短いスカートに色んな色の髪の毛

そして…‥

とても汚れた空気と暗い瞳の子供達…‥
私を見る人達など一人もいない

みんな四角い物を持って耳にあてていたり、遊んでいたりしているから

あれはいない人とお話が出来る機械みたい

私には関係のないものね

ドレス着替えさせて欲しいのに…‥
この薄汚れた感じじゃないと駄目みたい
人間はかわっているわね
私には理解出来ない事だらけ…‥

あら?
珍しく私を見つめているわ

「ちょ、マヂヤバイ!何このゼロの多さ!」

「うわっ!一、十、百、千、万…そこから分かりませ~ん」
「キャハハ…」

「憎たらしい顔~!」

「汚いし、こんなん買う奴なんてオッサンだって!」

「わかるぅ~ロリロリのね」

言葉が理解出来るって辛い…‥

でもね
一番辛いのは何だか知ってる?

そう

人形は涙が流せない事…‥

だけどホントは夜中にこっそり泣いちゃうの

この世界には、私の知っている人達はもういない

私の最初のご主人様…‥

私との約束は?
また必ず迎えに来てくれるんじゃなかったの?

優しい女の子…‥
ミルクの匂い

とても大切な私のお友達

神様…‥

何故、人形には寿命がないんですか?
もし、人形にも寿命があれば…‥
約束も果たせるかも知れないのに

私にはわかっているの

もう、あの優しいご主人様は、この世にはいない事を…‥

だから…‥

私も…寿命を下さい
ある日、小さな女の子が私をじっと見つめていた

だけど、ごめんなさい

私は、もう疲れてしまったの

だから、貴女を見つめても笑えない…‥しばらくして、その女の子は、ママに手を引かれて、消えていったわ

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