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節分いい話:節分の鬼
2013年02月03日 23:20
むかしむかし、ある山里に、ひとりぐらしのおじいさんがいました。
この山里では今年も豊作で、秋祭りでにぎわっていましたが、だれもおじいさんをさそってくれるものはおりません。
おじいさんは祭りの踊りの輪にも入らず、遠くから見ているだけでした。
おじいさんのおかみさんは病気で早くになくなって、ひとり息子も二年前に病気で死んでいました。
おじいさんは毎日、おかみさんと息子の小さなお墓に、お参りする事だけが楽しみでした。
「かかや、息子や、早くお迎えに来てけろや。極楽→天国さ、連れてってけろや」
そう言って、いつまでもいつまでもお墓の前で手を合わせているのでした。
やがて、この山里にも冬が来て、おじいさんの小さな家はすっぽりと深い雪に埋もれてしまいました。
冬の間中、おじいさんはお墓参りにも出かけられず、じっと家の中に閉じこもっています。
正月が来てももちを買うお金もありません。
ただ、冬が過ぎるのを待っているだけでした。
ある晴れた日、さみしさにたえられなくなって、おじいさんは雪にうまりながら、おかみさんと息子に会いに出かけました。
お墓はすっかり雪にうまっています。
おじいさんはそのお墓の雪を手で払いのけると。
「さぶかったべえ。おらのこさえた甘酒だ。これ飲んであったまってけろ」
おじいさんは甘酒をそなえて、お墓の前で長いこと話しかけていました。
帰る頃にはもう日もくれていました。
暗い夜道を歩くおじいさんの耳に子供達の声が聞こえてきます。
「鬼は~、外!福は~、内!」
「鬼は~、外!福は~、内!」
おじいさんは足を止めてあたりを見回しました。
どの家にも明かりがともって楽しそうな声がします。
「ほう、今夜は節分じゃったか」
おじいさんは息子が元気だった頃の節分を思い出しました。
鬼の面をかぶったおじいさんに息子が豆を投げつけます。
息子に投げつけられた豆の痛さも今では楽しい思い出です。
おじいさんは家に帰ると押し入れの中から古いつづらを出しました。
「おお、あったぞ。むかし息子とまいた節分の豆じゃあ。ああ、それに、これは息子がわしにつくってくれた鬼の面じゃ」
思い出の面をつけたじいさんはある事を思いつきました。
「おっかあも、かわいい息子も、もういねえ。ましてや、福の神なんざにゃ、とっくに見はなされておる」
こう思ったおじいさんは鬼の面をかぶって豆をまきはじめました。
「鬼は~内、福は~外。鬼は~内、福は~外」
おじいさんは、わざとアベコベにさけんで豆をまきました。
「鬼は~内、福は~外」
もう、まく豆がなくなってヘタヘタと座り込んでしまいました。
その時、おじいさんの家に誰かがやってきました。
「おばんでーす。おばんです」
「だれだ。おらの家に何か用だか?」
おじいさんは、戸を開けてビックリ。
「わあーーっ!」
そこにいたのは赤鬼と青鬼でした。
「いやー、どこさ行っても『鬼は~外、鬼は~外』って嫌われてばかりでのう。それなのにお前の家では『鬼は~内』って呼んでくれたでな」
おじいさんは震えながらやっとの事で言いました。
「す、すると、おめえさんたちは節分の鬼?」
「んだ、んだ。こんな嬉しい事はねえ。まんずあたらしてけろ」とズカズカと家に入りこんできました。
「ま、待ってろや。今、たきぎを持ってくるだに」
この家に客が来たなんて何年ぶりの事でしょう。
たとえ赤鬼と青鬼でもおじいさんには嬉しい客人でした。
赤鬼と青鬼とおじいさんが、いろりにあたっていると、またまた人、いえ、鬼がたずねてきました。
「おばんでーす。おばんです」
「『鬼は~内』ってよばった家はここだかの?」
「おーっ、ここだ、ここだ」
「さむさむ。まずは、あたらしてもらうべえ」
ぞろぞろ、ぞろぞろ、それからも大勢の鬼達が入ってきました。
なんと、節分の豆に追われた鬼が皆、おじいさんの家に集まってきたのです。
「何にもないけんど、うんとあったまってけろや」
「うん、あったけえ、あったけえ」
おじいさんは、いろりにまきをドンドンくべました。
じゅうぶんにあったまった鬼達はおじいさんに言いました。
「何かお礼をしたいが、欲しい物はないか?」
「いやいや、なんもいらねえだ。あんたらに喜んでもらえただけで、おら、嬉しいだあ」
「それじゃあ、おら達の気がすまねえ。どうか、望みをいうてくれ」
「そうかい。じゃあ、あったかい、甘酒でもあれば、皆で飲めるがのう」
「おお、引き受けたぞ」
「待ってろや」
鬼達はあっという間に出ていってしまいましたが「待たせたのう」
しばらくすると、甘酒やらご馳走やら、その上お金まで山ほどかかえて鬼達が帰ってきました。
たちまち、大宴会の始まりです。
「ほれ、じいさん。いっペえ飲んでくれや」
おじいさんもすっかりご機嫌です。
こんな楽しい夜はおかみさんや息子をなくして以来、初めてです。
鬼達とおじいさんは、一緒になって大声で歌いました。
♪やんれ、ほんれ、今夜はほんに節分か。
♪はずれもんにも福がある。
♪やんれ、やんれさ。
♪はずれもんにも春がくる。
大宴会はもりあがって歌えや踊れやの大騒ぎ。
おじいさんも、鬼の面をつけて踊り出しました。
♪やんれ、やれ、今夜は節分。
♪鬼は~内。
♪こいつは春から、鬼は内~っ。
鬼たちは、おじいさんのおかげで、楽しい節分を過ごすことが出来ました。
朝になると鬼たちは、また来年も来るからと上機嫌で帰っていきました。
おじいさんは鬼たちが置いていったお金で、おかみさんと息子のお墓を立派な物になおすと、手を合わせながら言いました。
「おら、もう少し長生きする事にしただ。来年の節分にも、鬼たちをよばねばならねえでなあ。鬼たちにそう約束しただでなあ」
おじいさんはそういうと、晴れ晴れした顔で家に帰っていきました。
…節分のいい話を今日は書いてみました♪
このデジログへのコメント
おもしろかった
松山市の河内人さん:有難うございますこういう話も実は大好きです
鬼の性格が良くて良かったですね
S.ヒロさん:ほんとですね
kintaさん:たまたまネットで見つけた話だけど好きなお話載せてみました
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