勇者なんて来やしねえ　ネタメモ

あるところに、ある王国がありまして
そこに一人の魔王がやって来ました。
魔王が考えることといえば大概、国のお姫様を
さらって暴虐の限りを尽くし、現れた勇者に倒される
というのがセオリーなので
この国にやってきた魔王という男もまた
そのセオリーにのっとって魔王らしい魔王になりたいと
思っていたのであった。

しかし、彼がのっとったお城のお姫様は
デブでチビでおまけにぐうたらでわがままで
褒めるところといえば食べ物を残さずなんでも食べること
くらいで到底、勇者が生命をかけて助けにくるような
お姫様ではなかった。
姫の父と母は置き手紙を残して
娘を頼むといって城から出ていってしまった。

のっとったお城の財宝で魔物たちに給料を
払うつもりだった魔王であったが
あろうことかその城はすでに財政破綻しており
宝物庫はもぬけの殻。
魔物たちも現実的なので魔王が給料を払えないと知るやいなや
あっけらかんと踵を返す始末。
そんな魔物たちの中でも唯一のこったのは
トンカツ、トンジル、トンテキという豚の魔物三匹。
しかもこいつらも戦闘能力は皆無に近く
特技といえばゲーム、昼寝、読書と使えない。
しかし食い意地だけは一人前にあった。

この姫、大人しくしていれば可愛いものの
寝ている時以外はまるで子供。
魔王の肩に乗って遊んだり
勝手に通販でダイエット用品を買いまくったり
豚たちを紐で縛って遊んだりと
魔王も手を焼く女の子なのであった。
とにかく食い意地だけはあって
あれよあれよというまに魔王の蓄えさえも
危うくなってきた

とっととこの娘を勇者に引き渡したいと
考える魔王。しかし、勇者とて人間。
魔王が脅しても、諭しても街の若者たちは
なかなかお姫様を助けにこない。

そこで、満を持して魔王は
城で無料の焼肉食べ放題キャンペーンを口実に
若者を城に招き入れることにする。

しかし
勇者に渡すはずだった勇者の剣を姫が見つけてしまい
姫は大暴れ、多くの若者が犠牲になってしまう。
とりあえず事実をなかったことにした
魔王であった。

最後に城に乗り込んできたのは
よぼよぼの自称勇者のジジイだった。
結局、そのジジイを倒すのをためらった
魔王は老後の生活のためにジジイに城を譲った。
そして姫も置いていった。

数日後、森の小屋で豚と魔王は
慎ましやかにくらしていた。
そしてそこに小包が届き。
中にはあの姫が入っていた。