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こどなの階段改

2012年07月04日 20:11

こどなの階段

1
ハナ家の中で花、木に水をあげている。
鼻歌を歌いながら鳥や花に話しかけている。
花たちは彼女に話しかける
「おはようハナちゃん
「おはようハナ」
「お水を頂戴!」
「はいはい。」
「今日は遅いからもしかして
声が聞こえなくなちゃったのかと思ったよ」
「そんなちゃんと聞こえてるわ」
「よかった大人になっちゃったのかと思ったよ」
「私は大人になんかならないわ」
「花ちゃんずっと子供のままでてね約束だよ」

ピンポーン
編集さんだわ?」
「はーい」
朝倉さん、次回作絵本なんだけど
やっぱり登場人物は動物にしようかと…」
花玄関へ向かうと男の人が一人立っている。
手には紙袋を持っている。
「え…男の人?」
花の顔が曇る。

2
ハナの手には名刺
名刺には○○社児童書部門
担当 若木光一とかいてある。
朝倉先輩は先週から産休にはいったので戻られるまで僕が北条先生の担当になります…」
「で、さっそく来週の隣町でのサイン会の話なんですけど…」
ハナは暗い顔をして部屋のすみに立っている
朝倉さん、自分も男の人苦手だって言ったのに…」
「あの…」
「座らなくて大丈夫ですか?」
ハナは若木が座っているソファから離れ
部屋のすみの食器棚の隣に身を隠している。
「要件だけ話したら早く出て行ってください」
若木、家をあとにする
「じゃあ三日後に迎えにきますんで」
玄関の引き戸を慌ててしめる
ガチャ
「ふーまいったなこりゃ、あ」
「テーブルの上のお菓子、挨拶代わりなんで食べて
くださいね!」
ハナはが箱を開けると、そこには顔の描いた
マシュマロが入っていた。
すべてが微笑んだマシュマロであった。

3
大きな書店にやってきた若木とハナ。
バックには彼女の作品のポスターがある
黒猫ポポの冒険。
「うちの子、先生の世界が大好きなんですよ
おかげで花や動物に話しかけちゃって」

「先生は大人なのに子供の気持ちをもってらっしゃるんですねうらやましいわ、次回作も楽しみにしてます」
「大人かぁ」

若木は書店の人と会話している。
「あれ?先生がいない」
屋上でベンチに座っているハナ。
彼女の前をカップルが歩いている。
クリスマス何が欲しい?」
「えーバックかなぁ」
ハナは思った。
「同じ年齢くらいかな、私と住んでる世界が違うみたい。」
彼女の頭の中で声がする。
ハナちゃん、ダメよ。男の人はみんな野獣よ、
愛なんて存在しないの。お父さんだって他の女に逃げたじゃない。あなた大人になる必要はないのよ。お母さんの子供のままでいていいの」
若木がやってくる。
「先生、どこいってたんすか!早く帰りましょう!」
「一人にしておいて、車に乗りたくないの」
「でも、電車の人混苦手なんじゃ。」
「勝手に帰るから、放って置いておよ。」
若木はちょっと距離を置いて座った。
時間がたつ、雪が降ってくる、
ふと若木の頭を見ると雪が積もっている。
それを見てハナは笑った。
ぐうううと花のお腹の虫がなる。

車が家の前に、
「ごめんなさい、父の浮気が原因で離婚してから
男性に対して少し不信感があって。いつも両親が喧嘩するたびに現実から逃げるために絵の世界に逃げてた。絵の世界ならいつでも子供に戻れるから。
そうやっていままで生きてきた。」
「いいえ、これもお仕事のうちですから」
次回作ラフができたらFAXで送ってきてくださ
い」
「じゃあ、おやすみなさい。」
若木は笑って挨拶した。
扉を閉めてから。ハナ
口を食いしばって赤くなっている。
「あんな人もいるんだ」

お風呂でハナは若木さんの顔を思い出しながら
胸を触っている。
右手が下半身に伸びようとした時。
鏡の中に母親が現れた。
「なにしてるの?ハナちゃん
「はっ!」

4
ハナはプレゼントにもらった顔の描いてある
マシマロを見ながらぼーっとしている。
鳥、花
「なんかハナちゃん変だよ最近。」
「僕たちの声も前より聞こえないみたいだし。
子供に戻れなくなっちゃったのかなぁ」
ハナは机を覆うようにして座って
ハァーとため息をついている。
机の上には絵を書く道具や辞典、地球儀が並んでいる。「電話こないかな…」
電話がなる、
「もしもし?おねいちゃん?」
「カナちゃん?あんたどこにいるの?」
高校出てから帰ってこないからお母さんも心配してたのよ」
「それがさぁ、彼氏と別れちゃって。しばらくそっちに転がり込んでいい?」
「いいけど…いつくるの」
「今。」「イマ?」

家、カナのトランクが置いてある。
引越しの手伝いにきた男の子
「カナちゃん、これどこにもっていけばいい?」
「奥が私の部屋だから、そこにいれといて」
ハナは終始ポカンとしている。
カナの姿はハナが記憶している高校生のころとは
まるで違っていて。かなりハデになっていた。
男の子
ハナの寝室を開ける。
「ちょっと!そこは私の部屋よ!」
トイレ借りてもいいすか?」
公園トイレに行ってちょうだい!」
テレビはここでいいの?」
5
カナ!男の人がくるならちゃんと言ってよ!
カナはビールをのみながら絵本を見ている
へぇー姉ちゃん絵本描いてたんだー
すごいじゃん。
お母さんは?
お母さんは去年…
ふーん
ふーんって
お母さん心配してたのよ連絡先もわからないし
私はもう子供じゃないもん
親だからって義務なわけ?
あんた、今なにしてるの?
フーゾク。
ふっ、ふーぞく?
そんなびっくりしなくてもいいじゃん最近は
大学生でもキャバクラやってる時代だよ!
女に生まれたからには女を武器にしなきゃ」
政治家のおじさんも、会社の社長さんも
考えてることはみんな一緒だよ。」
「そんなはずないよ、」
若木さんの顔を思い浮かべるハナ
カナは絵本をパタンと閉じる。
お姉ちゃん、まだ知らないんでしょ?」
「もうお母さんはいないんだし、好い加減、大人になってみれば?じゃないとお母さんみたいになっちゃうよ」
「余計なお世話よ!」
6
電話をしている若木。
電話がつながらない。
「おかしいな」
上司「ちゃんと急かせよ!締め切りまで日がないんだからさ!ラフも上がってないんだろ?」
「こんどの新刊、別の人に頼むことにしたから」
「え?じゃあ彼女二はなんの仕事を…」
「これの挿絵頼むは」バサっと原稿が投げられる。

7
花に水をあげているハナ
花や鳥の声が聞こえない。
天井からカナの声が聞こえる。
耳を塞いでいるハナ。
母親の声が聞こえる。
「愛なんてどんな綺麗事で飾っても女は欲望刷毛口でしかないのよ」
「男って不潔でしょ、汚らわしいでしょ、お父さんも同じょ…若い女の前で裸になって獣のように」
「やめてよ!」
ハナは机の上の紙を投げ捨てる。
家を飛び出して行くハナ。
外に出たところで若木に遭遇する。
「今からおたくにお邪魔しようと」
「もう家に帰れない」

8
若木のマンション
ワンルームであるが、男性の一人暮らしのため
結構乱雑に本やゲームが積んである。
部屋には赤字のカレンダー。そして彼女の描いた
絵本は彼の机の上においてある。
雪が降っている
「これって、不倫小説挿絵?」
「ええ、上司からの命令で僕もなかなか断れなくって そんな激しい絵じゃなくて本当に」
ハナはベットの下から少し見えていたグラビア雑誌
に目が行く。
母親幻影
「ほらあなたの好きな人だって女性をものとしか見ていないのよ」
「なんだ、若木さんもそういう本読むんだ。」
「え?」
「お父さんだってそうだった、愛なんてないんだ
所詮男と女ケダモノだもの。」
「私がバカだったのよ、そんなものに憧れたから」
「なにかあったの?」
「あなたって本当に本当に気持ち悪い…あなただって私のことグラビア雑誌を見るみたいにみてるんでしょう?こんな小説読ませて…私があなたを好きになるとでも?裸になったらあなたもただの獣になるんでしょ?」
ハナは立ち上がって帰ろうとする。
「ちょっとまって!」
手をつかむ若木
「やってみようよ、本当に獣になるのか?」
母の声
「だめよハナちゃん罠よ!」
「いいわよ指一本でも触れたら許さないから!」

9
二人はベットの中で裸で横たわり
お互いに見つめあっている。
そして朝、
ハナは立ち上がる
「そのお仕事受けるわ…」
「ふっ!」といって笑う若木

10
とっとと出て行ってよ!このバカ男!
とカナが男を追い回している。
それを遠目にみながらハナは机に向かい
次回作の制作に取り掛かる。
彼女は一人の少女を描いている。
花や鳥の声は聞こえなくなった、でも
私は失ったものより得たもののほうが大きかった。
この作品が書き終わったら、彼に告白しよう
そう彼女は思っていた。

11 春
マシマロは最後の一個
電話がなる
朝倉さん、いつ戻ってきたんですか?」
「今月よ」
「びっくりしちゃったよ、不倫小説挿絵とか描いたんだって?」
「若木さんは?この前、原稿をお渡ししてから一ヶ月ほどあってなくて」
「ああ、ちょとまってね」
「あ、あのね。」

「そ、そうなんだ、ううん、お幸せにね。」
がちゃり
受話器を置くハナ。
最後の一個のマシュマロに微笑んだ彼女
それを食べた。

大丈夫、私はもう立ち止まったりしない
私は一人でも階段を登っていける
もう、子供には戻らない。

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