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おちからを、拝借したかった夜

2008年03月28日 00:24

おちからを、拝借したかった夜

あなたはたくさんの美女と恋に落ち
契りを交わし、
こともなげにそのもとを去った。
三度の離婚、四度の結婚
数限りない刹那的恋愛と別離
それはひろく世に知られるところ
夥しい数の、色褪せた記事を紐解くならば
あなたが恋心の在り処を動かすたび、
そのなりゆきをつぶさに書き立てることで糊口をしのぐ喧しいうわさ雀たちは、
別れた女性がいつまでも
執念深く恨みを抱き続けているかのごとく
ぴぃちく、ぱぁちくと、役立たずの言葉を並べ立てています

でもボクにはわかります。
彼女たちは、あなたと交わした言葉を
熱い思いをぶつけあい、
地の底までもと溶け合い
空の涯てまでと上りつめた時間を
決して後悔していないであろうこと

なぜなら、彼女たちはおそらく、
あなたが世界で一番孤独な男のひとりであることを
人に心根を気取られにくいかもしれない
幾分斜視気味の、あなたの瞳の中に、
見つけていたであろうから。

あなたとは誕生日が同じであること以外にも
因縁を感じることがないではありません。
あなたがその魂に宿した計り知れない孤独
底なしの人間不信には、さしあたって目を向けないにせよ、
私はその事実に意外を感じることはなかったし、
そもそも、あなたの魂がどこに向き、どこをさまよっているのか、あなたの口からいくつかのプロファイル的断片を伺うまで、さしたる興味があったわけではないのです。

申し訳ありません。
やはりだめです。

言い訳というよりは、申し開き、あるいは弁明、あなたにだけは明かしておきたいと思うことがたくさんあるのですが、今日だけで、すべてをお話することはできそうにありません。

ともかく、わたしは
殴りつけられるほどの衝撃を受けたのです
演技生業とするあなたの
その水際立った筆の冴えに。
それはたとえば、あなたが生涯忘れさることのできなかった、こんな情景・・・

「・・・死は黒い車でやって来るのかと、それまでは縁のなかった霊柩車に乗り火葬場へ向かう間の信号待ちの数秒間に外界から聞こえてくる下駄のカランコロンの音にも生命を感じた。荼毘に付している間、遠くをうろついていた野良犬の犬畜生さえ生きているのに、なぜ父にはもう生がないのだと悔しかったのもはっきりおぼえている」

わたしはついこの間、このときのあなたのような虚脱に陥ったばかりです。
その時、私の神経は異常なほどさまざまなものを捕まえていたはずです。
何もかもが、邪魔に思えてしかたがなかったのですから、それはあきらかなのです。
しかし、わたしは下駄の乾いた音のむごさも、恨めしい野良犬の遠吠えも、一切そのかけらさえ、記憶してはいないのです。
よしんば、それが、あなたの筆の冴えが記した架空オペラであるとしても、私には決してその、剃刀のような、怜悧な描写が
できるとは思えないのです。

才能の差
そういってしまえば、
すべての判断は、停止されるのですが・・・

これは、恐らくは激越な闘病の果て、その強い決意と祈りとは裏腹に、思い定めた刻限より13年も早く、肉体が滅んでしまったあなたの魂との、交信の儀式でもあります。
もう、おわかりいただけたかと思います。
ボクにあなたを
あなたの血族を描く力を
お与えください

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