- 名前
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【まじすか!】02-1、戦後のぴよぴよ。
2012年04月29日 16:11
昭和30年(1955年)。
美術部室。
「たのもー」
扉をノックせずに入る朱理。
「「たのもー」って、お前は道場破りか?べらぼうめっ」
部室で待ってた教師が汚い言葉と、笑顔で応対した。
「美術の日向先生だよ」
翔太が簡単に紹介する。
「夢野朱理です。宜しくお願いします」
一応、丁寧に挨拶する朱理。
「噂の転校生ってやつか。遠慮なんていらねぇぜ!日向孝吉だ」
校舎内で堂々とタバコを吹かす日向。まだ禁煙意識なんかミリもなかった時代だ。
「部員は?」
顧問である日向以外に、ひとの気配はなかった。
「モチーフや画材探しに出払っているよ」
歴史的な好景気はまだこれからの話であり、いや、景気に関係なくこの頃の中学生の教材事情は厳しかった。絵の具や染料は高級品であり、生徒は草木や土を採取して利用していた。日向は戦役の経験も踏まえて、部員に作り方や廃品のアートへの利用法を伝授した。
「ん?」
翔太は美術部室に転がってる絵画の中に何か気になるものを見つけた。
「可愛い女の子じゃない」
年齢は推定15、6。ドレスのような衣装を纏った美しい少女の肖像画だ。
「お。それに気づくとはなかなかいい審美眼じゃねぇか清澄」
多分、部員が描いたものではないだろう。
「これはあの独裁者、アドルフ・ヒットラーが描いたとされる肖像画だ」
「ぴよぴより!」
「朱理、何か言ったか?」
「いえ、何も言ってないわ。何か聴こえたの?」
「鳥だかとかげだかの鳴き声が」
「竜の声を聞いたっていうのか!清澄、お前すごいな。見直したぞ。ただの堅物優等生じゃなかったんだな」
わしわしと翔太を撫でる日向。
「痛い」
「この絵はどちらで」
「戦地の土産だ。俺の部隊が敗走した際に荷物に紛れ込んだのだ。指令室に飾られたとき、部隊に噂が流れてな。いまさっき清澄が聞いたという……」
「絵を見ていたら、聞こえたんですか」
「ああ。竜の声だ。と俺の部隊では言っている。しかし聞こえただの聞こえねぇだのひとによって違うだの。しょうがないから聞こえたって奴にどんな声か聞き質してな、いつしか余興の唄になっちまった」
日向は歌い出した。
「ぴ、ぴ、ぴ~よぴよ、ぴ~よぴよっ♪ぴ、ぴ、ぴよぴより~♪」
「クスクス。なにそれ~っ」
ウケる朱理。しらける翔太。
「厳しい戦地をこれで乗りきったんだぞ。べらぼうめっ」
「よしっ朱理。出番だっ」
ビシッと肖像画を指す翔太。
「な、なによっ?」
「竜の声が聞こえたり聞こえなかったりの独裁者の肖像画!お前の魔法で解明して見せろ」
続く!
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