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【まじすか!】01-3、まんざらでもない!?

2012年04月25日 19:37

昭和30年(1955年)。

「おやおや、まあまあ」
翔太の母が帰宅し、その場面に居合わせた。
勝手にひとの土地踏み込み、勝手に家を建てた怒りを表すかと思いきや。
「どうせなら同棲すればいいのに~」
と言う始末。「噂」は校門を出て、母の耳に到達してしまってたのだ。
はじめましてお母様、夢野朱理と申します。お心遣い嬉しく思いますが、私と息子さんはまだ今日会ったばかりの間柄。云々……」
丁寧におしとやかな娘を演じる朱理。
「おやまぁ。いい娘じゃない。翔太も隅に置けないわね~」
すっかり騙される母。
でも、土地の件は良いのか?
「瓦礫も処理してくれて助かったわ。これで庭の手入れも楽になるわ~」
手招きする母。
「今日は朱理ちゃんの引っ越し祝いね。腕を振るうわ~」
「いいのかよ、母さん」
「どのみち、立ち話もなんでしょ」


あっけなく決まった。
土地の権利者は清澄家。朱理ちゃんは下宿人、大家が私って事になるわね」
つまり瓦礫を素材に作ったあの建物もさりげなく母さんがゲットだった。おおらかなんだか強かなんだか。
「でも中高生から家賃取るわけにはいかないわ~。だから朱理ちゃんにはちょっと清澄家の家事を手伝ってもらうわね」
強かだった。
見ようによっては朱理が可哀想ですらある。
「わかりましたお母様」

翔太は思案する。
もし朱理がここで住む事を拒否されたら、どこから学校に通うつもりだったのか。
てか、引っ越し段取りをろくに決めずにこの街に来たのかよ!

戦時中終戦直後の混乱期はこんなものではなかったわ。孤児による略奪なんて日常茶飯事だったわ~。それに比べたら朱理ちゃんは紳士的よ」
息子の考えを読むように母は語る。
ここで拒否しても、朱理は別の土地に勝手に住み着くだけだ。
家の建物がモダンなだけで、やってる事は戦災孤児の野営と変わらない。というわけだ。
やはりおおらかなんだろう。
深いなと思う翔太だった。
「で。結婚式はいつなのかしら?」
ズコー!!
生憎息子は男として目覚めるのがマダでねぇ。初夜の作法にはまだ程遠いのよ~」
「何言ってんの、母さん」
わけわからんが恥ずかしい話題だとは察した。

「ええっ。じゃあわたし、ぱんつの見せ損なんですか」

「既成事実はあるわけね~。翔太も隅に置けないわ~母さん早く孫を抱いてみたいわ~」
「なにいってんだ!母さん。僕はまだ結婚とか考えてないよ」
「あら。母さんの時代は恋愛どころではなかったわ~。初めて顔を見た日が結婚式なんて話をよく聞いたわ~」
「なればこそ!だよ。僕の人生は僕が決めるよ」
「まるで朱理ちゃんに魅力ないみたいな言い方ね~。謝りなさい」
見ると朱理はあからさまな嘘泣きをしていた。
「ひどいわひどいわ」
「ご、ごめん。朱理が魅力ないとか言う話しゃないんだ……」

「とにかく、面白くなってきたわね~」

こうして、奇妙な関係は始まったのだった。

ちゃんちゃん

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