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【魔法少女っ】61-4、明かされるどころか壊れる悲劇的過去。

2012年02月25日 20:22

阿呆!」
茜はアドルフを叩いた。
「なにするの?」
驚く妹。
突っ込みですっ!」
そこは真面目に答えなくていいよ茜。
「むぅ。やはりユダヤ人に売るのはダメだったか」
「いや、こっちの都合ですっ。街でちょっと盛り上げちゃいまして……」
お互いに反省点を述べた。

「なるほど。街がそういう方面に向かったのなら協力しなくてはな」
アドルフは翌日、絵画の売買契約を解除した。

一方、茜は街の活性化策を提示して一躍、街の有名人になっていた。
「なるほど。街の若い娘を集めて街の宣伝活動のための劇団音楽隊にするのか。それは楽しそうだな」
「もちろん、おじさん達が同じ事してもいいんですっ。日本ではこの手法で危機を逸した商店街が沢山!」
もちろん、平成の日本だ。ご当地アイドルを作ろうって動きだ。
「アドルフさんの風景画は大衆浴場に掲げるですっ」
「おおっ!大衆浴場が明るくなってきた!」

「何だか可愛い女の子での宣伝部隊を見ると胸がきゅんとなりもやもやするんだ」
萌えって言うですっ!」
アドルフ妹もアイドルの一員として活躍する事になった。
「すごいぞステファン。俺は誇らしいぞ!」
アドルフは急増した街の観光客似顔絵描きに追われる事になった。

そしてこの街は恒久的な平和を誇るのだった。


ある朝、茜は留学先であるドイツの大学に通うべく、アドルフ邸から発った。

「茜ちゃん!」
見送るべく、妹は茜を追った。
「ステファン。いってきますですっ」
「待って。……有り難う、茜ちゃん」
茜の手を握って引き留めて、妹は言った。
「なんですか?急に改まって」
妹は神妙な面持ちである。
「いや、これで最後でもう逢えないから」
そうだった。ここは茜が見てる夢だった。もうすぐ目覚める時間なのだ。
そして妹は、この夢に次回がないと悟っていたのだ。
「本当に有り難う。私達の、街の運命を変えてくれて。そして、お兄ちゃんとの時間を少しでも長らえてくれて」
泣き目の妹。
「ひとつ、抜けてるですっ」
「なあに」
「わたしはステファンの友達になったんですっ。そこにお礼ないですね~」
「だって、もう逢えないもの」
妹は茜の手を握る。
「いつでも逢えるです……ステファンの肖像画がわたしの手元にあるですっ」
現実のアドルフが描いた絵の人物はステファンだったのだ。
「有り難う……本当に有り難う……お兄ちゃんを、宜しくね」
「もちろんですっ」


アドルフの妹、ステファンの言いたい事はわかっていた。
本来の歴史ではステファンもこの街も悲劇に見舞われるという事を。
ステファンはそれを茜に伝えたくて、夢のかたちで茜と出会ったのだ。

「さよならは言わないですっ!」


朝。
2月14日。快晴。
「おはようですっ。アドルフさん。ステファン」
カーテンを開けて、朝日を部屋に呼び込む。
「ぴよ?(ステファンって誰?)」
茜は肖像画を指差した。
「ぴよぷ~(勝手に名付けるな)」
「じゃ!学校行くですっ」

「お久し振りですっ!」
「え?昨日逢ったばかりやん」
「茜さん寝惚けてますわ」
「……久々」
あらあら。一日千秋?わたしもよ~」
「くふふ。なるほどね♪」
おかしがるいつもの面々だが、麻衣子だけは理解してるようだった。

続く!

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