- 名前
- ヴォーゲル
- 性別
- ♂
- 年齢
- 74歳
- 住所
- 海外
- 自己紹介
- もう海外在住29年、定年もそろそろ始まり、人生のソフト・ランディング、心に浮かぶこと...
JavaScriptを有効にすると、デジカフェをより快適にご利用できます。
ブラウザの設定でJavaScriptを有効にしてからご利用ください。
F Claasen, Paquito D"Rivera ケルン インプロ
2007年05月23日 12:48
ミュージック・トリエナーレ ケルン2007 インプロヴィゼーション
2007年 5月6日 於 ケルンシンフォニーホール
Fay Claasen, Paquito D"Rivera with WDR Big Band and WDR Rundfunkorchester
編曲・指揮 Michael Abene
火曜の夜には不定期ながらドイツ、ケルンに本拠を置くテレビ局WDRのジャズ番組がもう何十年も続いており、ドイツ文化の中心の一つであるケルンのWDRビッグバンドはヨーロッパのビッグバンドの中でも歴史があり達者なジャズメンをそろえていることで定評があるのだがそのベース奏者であり編曲も担当する Ali Haurand がホストを務めるJazzLineという番組がそのメインである。 この日はミュージック・トリエナーレ ケルン2007 インプロヴィゼーションと題してビッグバンドにシンフォニーオーケストラを加えた大編成をバックに2人のソリストが加わってインプロヴィゼーションをやろうという試みの70分の番組構成である。
日頃のスタジオや普通の舞台録画ではなくケルンのシンフォニーホールライブ特別番組で音楽もさることながら入れ物も豪華なものだった。 古くはカラヤンが颯爽と君臨していたベルリンのホールはモダンなものだったがケルンのものはクラシックというよりローマ時代の円形劇場仕立てで生の自然の音響効果に電気操作を最小限に抑えることを目的にしているようだ。 もう何年も前にローマ時代の円形劇場をフランス、リヨンの南、ヴァンヌで見学した折、それがたまたまフランスでは知られたその町のジャズフェスティバルの翌日であり舞台がまだ解体される前だったので舞台中央に立ち話かける家族の声を後方の客席から聞いてその音響効果に驚いたものだがケルンのホールも明らかにその構造を持った擂り鉢型のものである。
オランダのスキャットの名手ジャズ・ヴォーカリスト、フェイ・クラーセンとハヴァナ生まれのリード奏者パキート・デ リヴェラをゲストに緻密な構成のインプロヴィゼーションの試みである。 インプロヴィゼーションというのはシンフォニーオーケストラ構成で何人かのソリストを迎え、クラシック音楽に対比しての意匠だろう。 ジャズの本性は即興演奏であるのだがその割合をどのように配分するかによって塑性が決定される。 本プログラムでは全員の即興演奏は期待されない。 特にシンフォニーオーケストラのメンバーには自由は全くなくハーモニー装置として厚みを持つ響きを生み出すことに貢献させられる。
ビッグバンド、リード、スキャットをそれぞれフィーチャーした3曲に最期にそれぞれが合わさったジャム形式の4曲でその間に二人のゲストにそれぞれ5分程度のインタビューをはさんだ70分であるからビッグバンドの数人を含めたゲスト各人の即興演奏が本コンサートの題目、インプロヴィゼーションということになるのだろうがその合間合間に響くシンフォニーオーケストラのつむぎだす響きの重厚、甘味、且つシャープなポリリズムには20年前には実現されなかった現代の大型ジャズ演奏のクラシックに対する明らかなジャズの優位を示すインプロヴィゼーションである。
明らかにジャズを特色付けるサキソフォーンという楽器がフランスで花咲きそれをいち早くキューバのハヴァナにもたらした人の息子であるデ リヴェラが幼少時よりクラシックもジャズも境がないものとして親しんだアルトサックス、クラリネットを駆使して演奏するのをみるとこの20年ほど各地でアルトを駆使してバトル合戦で奮闘していた頃が思い起こされ、華麗なアルトの印象が強いのだがこの日、自分のソロの合間に大編成のサウンドと複雑な楽譜をユニゾンで演奏するのを見るときにはこの大編成ならではのユニークな両方の腕試しだと受け取れた。 特にクラリネットの演奏には大編成を意識してか静かな火花が感じられ円熟の証と受け止められた。
画面に映し出される60人は優に越したメンバーの中には東洋人と見える顔が何人かあるがこれは欧米の大編成楽団に見られる傾向である。 その中でギター担当の男性がソロのパートを何回か執ったのだが韓国、中国、日本人かの区別はつかない。 可能性の一番は日本人なのだけれど確かではない。
ヨーロッパで今クラーセンは注目されている。 ヴォーカリストとしてそのスキャットのインプロヴィゼーションの巧みさが注目されていて先日2度目のマスタークラスにアムステルダムのコンセルバトワールで陪席する機会があったのだが訓練された咽喉を正確に制御し学生たちに即興と協調を指導する場面では厳しい選考の結果入学し訓練された若葉マークのヴォーカリストたちとクラーセンの差を耳にして、いまさらながらこの人の才能と技量を確認した。 日本でも昨年この咽喉はライブとCDで賞賛されている。 オランダ人女性のヴォーカリストは嘗てアン・バートンが日本で好まれたがそれに続くジャズ・ヴォーカルになるに違いはないが、その目指すところはクラーセンにはアン・バートンの安全性に加え、音楽性における危うい冒険の要素が大きいようだ。
このデジログへのコメント
コメントを書く