- 名前
- nomiya8
- 性別
- ♂
- 年齢
- 80歳
- 住所
- 埼玉
- 自己紹介
- 気持も若い積りだし、身体もそうだと思ってましたが先日忘年会でボーリングをした時、運動...
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今何処(いまいずこ)-N O編(続)
2007年04月14日 10:29
今までは彼女が私の姉で、私は姉に従順に従う弟だったが、永い月日の間に私は結婚し彼女も結婚して、今二人の間には姉弟の関係ではなくなっている事を感じた。私は立ち上がり「もうそろそろ帰ろうか」、彼女は少し間を置いて「今日は一人で帰りたくないの、一緒に来て」と言った。彼女の叔母の家は新丸子、私は草加でアパートで妻が待っている。ここからは正反対の方角で彼女を送って行くと帰りの終電に間に合わないかも知れない。未だそうかに移って間が無く、今までそんなに遅く帰った事は無かった。私は未だベンチに座っている彼女を見下ろしながら少し迷った。彼女は真っ直ぐ前を見たままで私の方は見ていなかった。「うん、いいよ家まで送るよ」と言って彼女に手を差し延べた。彼女は私の手を握ると立ち上がり地下鉄の駅へ向かった。3,40分位だったかもっと永い様にも感じた。二人は殆ど会話も無く只隣り合って座っていた。そもそも彼女に会うこと自体妻に対しての背信行為だが、今までの彼女との関係から、この位なら許される範囲じゃないかなと勝手に判断していた。そして時々無言の彼女の横顔を見ていた。
電車から降りて少し歩いた所で彼女が立ち止まり「ここがおばの家なの、一寸上がっていかない。叔母は今日旅行に行ったから帰ってこないの」と言ってバックから鍵を出し玄関の戸を開けた。確かに中は真っ暗で誰も居ない事は解ったが、彼女が言った一寸上がったらとはここまで送った私への配慮だと思い「いや遅くなるからこのまま帰るよ」と言うと「いいのよ何も無いけど上がってよ」と今度は懇願するような感じにとれ、一寸躊躇はしたが「じゃ少しだけお邪魔します」と言って彼女に従い靴を脱ぎ部屋へ入った。その部屋は6畳の和室で真ん中に座卓が一つ置かれていて壁側に茶箪笥があるだけの、いかにも高齢な女性の一人暮らしの感じが受け取れた。彼女は座布団を一つ差し出し「ここにすわってて」と言い残し彼女は私の後ろ側にあるガラス戸を開けた。何の気なしに目をなると、そこはコンクリートの土間になっていて風呂桶があり、少し離れた所に台所らしき物物があった。彼女はお茶でも入れるのかなと思っていたら、直ぐに出てきて私の横を通り抜け玄関の方へ消えた。今度は直ぐには戻って来なかった。多分寝室へでも行って着替えているのだろうと思った。私の頭の中ではこれから如何したらいいのかと思っているところへ彼女戻って来て「もう沸いたと思うからお風呂に入って」私は何でここまできて風呂に入らなければならないのかが理解できなかった「ええっ、いいよ」と言うと「いいから入って」と半分命令的な口調で、仕方なく立ち上がり風呂場に向かった。土間から木製の上がり台があり、そこから風呂桶に入る様になっていた。私はガラス戸を閉め服を脱ぎ、洗面桶で何杯かの湯を体にかけてから浴槽に入った。少しすると彼女がガラス戸を開けて入ってきて「どお、大丈夫」と言い「ええ」と答えると「洗ってあげるから上がってここに立って」と言った。私は急な事ときまり悪さで直ぐには立てなかった。「早く」催促されしぶしぶ立ち上がった。彼女を見ると彼女の目は特に私の体のどこかを見ているではなく、私は以前の弟の様な感じになっていた。それでも恥ずかしさはあったが覚悟を決めて彼女の前に立った。彼女は手際良く私を洗い終えるとバスタオルを手渡し「これで拭いて」と言い残し居間に上がりガラス戸を閉めた。私は着終え「どうも」と言い彼女の横に座った。彼女と目を合わせるのが少しきまり悪かった。すると彼女は急に立ち上がり頭上の電気を消して「私を抱いて」と言い私の横で仰向けになった。
・・・・・
彼女は玄関まで来て互いに「さよなら」と言って、それが最後の言葉になった。
私も彼女と交わった時に"もうこれで互いに会う事はなくなってしまったな"と心の何処かで感じていた。
(O N編)完
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