出会い系の女48

男は自宅に戻って、テレビを点けてニュースを見た。

ニュース映像はこの男にとってBGMである。
刺身をつまんで焼酎をお湯割りで飲んだ。酒はキライでないが量は呑めない、
いつも、2杯から、飲んでも3杯である。
赤ら顔になって上機嫌になる。

カラオケの女とつきあってから、歌も歌うようになったが、
帰りは車だから飲めない。
まだ、一人では歌う気になれない。

30分くらい経つと酔いが少しずつゆっくり回ってきた。
ほろ酔いはアタマを冴え渡らせる。酔いが想像力を加速させる。


男は、メールを見た。


わたしは、淫乱なの。

もちろん、純情よ、も、純情そのものよ。

でもね、淫乱なの。

ウフフ、純情と淫乱

ヘンよね、

でもね、ちっとも変じゃないの。


純情って、女とか男とかにかぎらず、あなたみたいなヒトでしょ、

生真面目一辺倒で融通が利かなく、少し強情で、そのくせ、涙もろい、

きゃは、わたしもそうよ。

だからね、あなたの、ちっともおもしろくないコメ見ていると、そう感じるわ。

何をするにも、おもしろみがないのよね、

だからといって、純真でないことにはならないわよね。


こういう女や男がヒトを好きになると、どうなるか、わかるわよね。

おもしろくないからと言って、人を好きなっちゃイケないって法なんてないﾜよね。


そうなの、一途になっちゃうの。

たぶん、あなたもそうだと思うわ。


でもね、一途であることに違いないのだけれど、

もう一人好きな人が出てきたときよね、問題は。


わたしは、もう一人好きになった人が現れるでしょ、すると、
その人も一途になっちゃうのよ。

ヘンかしら？

そしてね、また新しく好きな人ができるでしょ、
同じように、一途のなっちゃうのよ、

へん？

次々、好きな人が出れば、一番は初めの人と同じように一途になっちゃうの。


こういえばイイかな、

ジュリエットは一人だけど、ロミオは好きになった分だけいるってコトかな。

だから、わたしからすればね、

シェイクスピアはね、一人のロミオだけに代表させたのよ、きっと。

代表取締役ロミオを書くだけで十分でしょ。


好きな気持ちに変わりないもの、だからね、
ロミオAもロミオBも、好きさに違いなんてないのよ、
もちろん、ロミオC,Dも、そうよ。

一途よ。

ヘン？

好きだからもちろん、sexはするわよ、

ロミオAも、Bも、C,Dもね

へん？

ウラギリ？

でもね、わたしは一途なの、純情なの、よ。



男はここまで読んで、ワケがわからなくなってしまった。

今日の2万円の女で、この女のヒントで、淫乱は理解した気になっていた。

しかし、複数の男を愛する女は、どれもみんな、一途、ってコトには考えが及ばなかった。

淫乱はわかったが、一途がわからなかった。


ここから先は、果たして、この男に理解が及ぶのだろうか。



メールを続けた。


人を愛するでしょ、
なら、もう一人愛してもおかしいことないんじゃない、

キリストは隣人を愛せよ、といってるでしょ、
隣人って一人にかぎらないでしょ。

2人も3人も4人も、人を好きになってもおかしくないでしょ。

むしろ、一人だけに限定する方がおかしいんじゃない？

人を愛して、もう一人を愛すると、ウラギリになるの？


愛するコトって、人を好きになることって

隔たりがあるの？

あるヒトの愛し方は10だけ、別な人の愛し方は２０だけ、って
そういうことって、できるの？

愛し方、って、誰も純情じゃないの？

隔たりなんて、あるわけないんじゃナイの？

なら、愛した人は誰にでも、一途ってコトにならない？



読んで、男にはわかるが、頭から足に突き抜けるようなわかり方でない。
しかし、このニホンではこんな愛し方する女は、少ないだろうぐらいはわかる。

少ないだけじゃない、たぶん、いないんじゃないか。


ふむ～

こういう女もいるもんだ、

ヘンに感心してしまった。



ウラギリってどういうこと？

メールの女は続けた。

愛する人は一人だけって、誰が決めたの？

トモダチはみんな多いことをジマンするでしょ、

男の人は、愛人を多くもつことにジマンするでしょ。

女の人が多くの男の愛人をジマンすることは憚られるでしょ。

男の人がウラギリしても許されるが、女の人は許されないの？


ウラギリって、政治的なことでしょ？

一つの秩序に反するようなことが、裏切ってコトじゃないの。
一つの秩序って、家族かしら。
家族の秩序を乱せば波風がたって、社会的に問題が発生するってコトでしょ。

隣の亭主と不倫がバレれば、タダでは済まないわよね。

そうならないように、ウラギリってコトバで牽制してるんだわ、きっと。

でもね、ウラギリであろうとなかろうと、
愛情のキモチそのものには、いささかも変わりないでしょ。

好きなモノは好き、よね。

じゃあ、男の人が他の女の人を好きになるのも、しょうがないわよね。

わたしが他の男の人が好きになったと同じようにね。

これって、ウラギリ？

それとも嫉妬？



男には今まで経験したことがない、ふか～い、問題に遭遇しだした。

最近まで、この国の文化風土で女を切り捨ててきた、それが3年前なくなった女房であった。
女房にかぎらず女一般を、切り捨てていた。

切り捨てていたモノに、ウラギリとか嫉妬とかはない。

しかし、女を追い求めると、これは避けて通れいないことになった。
なぜなら、
女は愛情の塊だが、しかし、
その裏返しは、ウラギリと嫉妬になる。

中身は同じであっても、裏と表は天国と地獄ほどにも違う。


ところが、この女は、
どの男にも、一途だという。
どの男にも、純愛だという。



そしてね、これが最も大切なことなんだけど、

わたし一途でしょ、

男の人が好きになればなるほど、カラダが、私の体がね、反応するの、

も、淫乱なの、

淫乱なんてもんじゃないわよ、

も、ベッドが、ね、ビショビショよ。

喘ぎ声なんて、恥ずかしくて言えないわよ、

わたしの声がすんごく大きいんだって、そんなことわたしい覚えてないわよ、

悶え方が、激しいんじゃなく、も、狂ってるんだって、わたし、全然、覚えてなんかいないわよ。


でもね、

わたしが好きでないと、体がね、ぜんぜん、反応しないのよ、
こればかりはてきめんね。

わたしが一途になった男の人でないかぎり、体が反応しないの。
セックスにならないのよ。

純粋に愛した人でなければ、セックスで気持ちｲｲく、ならないのよ。
続かないのよ。


でもね、

一途に愛せる男の人って、わたしイ、いっぱいいるのよ。

おかしい？

へん？

ロミオがね、5人も10人もいるの、

おかしい？



男は悪酔いしたのかしらん。